米EUの関税合意にEUから不満爆発
フランス・ドイツ中心に不満と反発…冷めた受け止めも
EU通商代表は「困難な状況下での最善の結果」と説明

米国と欧州連合(EU)との間で締結された貿易和解をめぐり、EU内では複雑な反応が広がっている。
特にフランスとドイツを中心に強い不満が噴出している一方で、「仕方がない」と諦める加盟国も少なくないという。
28日(現地時間)、英BBCによると、EU内で最大の経済規模を持つドイツとフランスでは、前日にウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長とドナルド・トランプ米大統領が発表した貿易合意に対し、批判的な声が相次いだという。
フランスのバイルー首相は、SNS「X」で「欧州にとって暗い日」と投稿し、「共通の価値を確認し、共通の利益を守ろうと結束してきた自由な国民の連合が、結局は屈服してしまった」との見方を示した。
フランスのエマニュエル·マクロン大統領は今回の合意について、公式な反応を出していない。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、貿易合意直後の歓迎声明では「輸出主導型のドイツ経済にとって大きな打撃となりかねない貿易紛争を回避できた」と評価していたが、続く記者会見では「関税によってドイツ経済に相当な影響が及ぶことは明らかだ」と述べ、政界や産業界に漂う懸念を反映する発言もあった。

ドイツ産業連盟(BDI)は今回の合意について、「米欧間の貿易の未来にとって致命的なシグナルになりかねない」と指摘している。
また、フランス中小企業連合会(CPME)は「フランス経済にとって非常に悪影響を及ぼす内容で、中小企業には壊滅的な打撃となるだろう」と反発した。
トランプ大統領の支持者として知られるハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相も、「(トランプ大統領が)フォン・デア・ライエン委員長を朝食にしてしまった」と例えた発言をしている。
このように各国から不満が噴出しているものの、今回の合意についてEU全体での批准が拒否される可能性は低いとみられている。
EUの貿易合意には全27加盟国の同意が必要なため、理論上は1か国でも拒否すれば合意は成立しないが、実際にそのような行動を取ることは容易ではないという。
合意内容に対して強い言葉で批判を展開しているフランスでさえも、最終的には受け入れざるを得ないとの雰囲気が漂っている。
スペインのペドロ・サンチェス首相は「熱意はないが、今回の合意を支持する」と述べ、冷めた反応を示した。
一方で、不確実性が解消されたことに安堵する声もあり、EU内で合意を歓迎する反応もあるという。
イタリアやフィンランドの首相、デンマークの外相、スウェーデンやアイルランドの通商担当閣僚らは、声明や記者会見を通じてこのような立場を表明している。
加盟国の不満とは対照的に、交渉を主導したフォン・デア・ライエン委員長やEU通商担当のシェフチョビッチ委員らは、今回の合意が「困難な状況下で得られた妥当な成果だった」として、加盟国の理解を得ようとしている。
シェフチョビッチ委員は28日、「今回の合意は、非常に厳しい状況の中で可能な限りの最善の内容だったことは明らかだ」と述べ、貿易だけでなく安全保障やウクライナ戦争といった「現在の地政学的な不安定さ」も考慮された結果だと説明している。
ウクライナ戦争に対して米国の軍事的関与を必要とするEUにとっては、米国と貿易面で激しく対立することは現実的でなかったとみられる。
フォン・デア・ライエン委員長も27日の発表時には「ついにやり遂げた」と前向きな評価を示していたが、翌日にはフォン・デア・ライエン委員長の所属政党である中道右派・欧州人民党(EPP)のマンフレッド・ウェーバー代表からさえも、「これは被害の最小化を図るダメージコントロールにすぎない」と評されるなど、厳しい見方も出ている。
ドイツ社会民主党所属で欧州議会の通商委員会委員長を務めるベルント・ランゲ議員も、政治メディア・ポリティコに対し「トランプ大統領が勝ったことは疑いの余地がない」と述べている。
注目の記事