
ドナルド・トランプ米大統領が、4つ星将官への昇進が内定した軍関係者全員に対し、指名前に自身との面談を義務づけていると報じられた。慣例を無視したこの動きに対し、軍の政治的中立性が損なわれるとの懸念が高まっている。
29日、米紙『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は、ピート・ヘグセス国防長官の指示により、将官候補がホワイトハウスでトランプ大統領と面談しなければならない状況になっていると報道。本来、統合参謀本部議長や戦闘司令官など限られた重要ポストの候補者のみが大統領と接触するという慣行を覆す内容で、軍の党派的利用への疑念を招いている。
トランプ大統領はこれまでも軍への強い関心を示しており、大統領1期目には複数の将軍を政権の民間ポストに登用。「私の将軍たち」と呼び、自らの政治的立場と軍の権威を一体化させるような発言を繰り返してきた。一方で、自ら任命したマーク・ミリー前統合参謀本部議長を「反逆罪」とまで非難し、死刑に処すべきだと主張したこともあった。
現在、米軍には36人の4つ星将官が在籍しており、すべての候補者と個別に面談を行うことは前例がない。ジョージタウン大学のハイディ・アーバン教授(予備役大佐)は「4つ星将官は政治任用職ではなく、全員との面談は個人的忠誠心を問う行為と受け取られかねない」と警鐘を鳴らした。
また、デューク大学のピーター・フィーバー教授は「面談が政策議論ではなく、バイデン政権への批判を含む政治的踏み絵なら重大な問題」と指摘。過去の国防長官であるドナルド・ラムズフェルド氏やロバート・ゲーツ氏であれば「不快感をあらわにしただろう」と語った。
国防総省の一部当局者も、面談スケジュールの調整が昇進手続きの遅れを招いていると証言しており、軍の運営そのものに影響が出始めている。
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