
再軍備を進めるドイツ政府は、来年度の国防費を30%以上増額する方針だ。一方、国家の負債増加に伴い、財政健全性への懸念も浮上している。
日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(F.A.Z.)」によると、ドイツ連邦政府は30日(現地時間)の閣議で、5,205億ユーロ(約88兆5,731億円)規模の2026年度予算案を可決した。
国防費は32%増の827億ユーロ(約14兆730億円)に設定された。ドイツ政府は国防費を毎年大幅に増額し、北大西洋条約機構(NATO)が2035年を目標に掲げたGDP(国内総生産)比3.5%の直接的な軍事支出を、従来の予定より6年早く達成する計画だ。
ドイツ議会は今年3月、新規負債の上限を厳しく制限する基本法(憲法)を改正し、国防費支出を事実上無制限に認めた。また、12年間で5,000億ユーロ(約85兆990億円)を分割して使用するインフラ投資基金には、負債上限が適用されない。
これにより、来年度の新規負債は1,743億ユーロ(約29兆6,656億円)、2029年には1,861億ユーロ(約31兆6,738億円)まで増加する見込みだ。

ドイツのメディアは、現在のGDP比63%の政府負債比率が、2029年には70%に達すると予測している。これは、現在100%を大きく上回るフランスやイタリアなどの周辺国と比べれば低水準である。しかし、財政規律に厳格なドイツでは、再軍備およびインフラ投資を名目とした資金投入が、将来世代に負担をかけるとの指摘もある。
F.A.Z.は、利払い負担が現在の約300億ユーロ(約5兆1,059億円)から、2029年には600億ユーロ(約10兆2,119億円)以上に増加すると指摘している。ただし、金利がある程度安定している場合に限る。
ドイツ納税者連盟(BdSt)のライナー・ホルツナゲル代表(Rainer Holznagel)は「ドイツの最高信用格付けは一方通行でも永遠に固定されたものでもない」と述べ、国家の信用や市場状況によっては、利払いが年間1,000億ユーロ(約17兆206億円)を超える可能性があると懸念した。
ドイツのラース・クリングバイル副首相兼財務相は同日、「2026年は記録的な投資の年になる」としながらも、「政府のすべての構成員が節約に努めなければならない。これは大きな挑戦だ」と述べた。
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