
米ドルの価値が先週、主要国通貨に対して1.5%上昇し、昨年11月にドナルド・トランプ米大統領が再選を果たして以来、最高の週間上昇幅を記録したと伝えられている。
背景には、再選を果たしたトランプ大統領による政策への期待感が一部で指摘されていたが、その一方で先行きについては不透明感が強まっているという。
米労働省が1日に発表した7月の雇用統計では、トランプ政権の関税政策が労働市場に想定以上の打撃を与えた可能性が示唆されており、市場では懸念の声も出ている。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は2日(現地時間)、LSEGのデータを引用し、ドルの価値を示すドルインデックスが1週間で1.5%上昇したと報じた。ただし、同指数は1日の雇用統計発表直後に1.3%下落しており、市場の反応には揺らぎが見られた。
ドルは年初以降、下落傾向にあったが、これは関税政策が実体経済に打撃を与えるとの見方から、投資家が米国資産を手放し、欧州などへ資金を移しているためと分析されている。年初の下落率は1973年の指数導入以来で最大水準に達していたという。
しかしその後、雇用指標の底堅さやインフレの比較的落ち着いた動きが確認されたことから、ドルは持ち直しの兆しを見せていた。
ただ、この反発ムードは7月の雇用統計発表によって一変した。7月の非農業部門就業者数は7万3,000人増にとどまり、市場予想の11万5,000人前後を大きく下回った。さらに、5月と6月の就業者数も合計25万8,000人分が下方修正されたことで、労働市場の底堅さが統計上の誤認によるものであった可能性も浮上している。
この発表を受けて、1日のニューヨーク株式市場では主要3指数がそろって大幅に下落し、ドルインデックスも再び1.3%下げる展開となった。
市場関係者の間では、ドル高の流れが一服し、今後は下落基調に転じるとの見方が広がりつつある。
ドイツ銀行資産運用の米国最高投資責任者(CIO)ディーパック・プリ氏は、「今後数日から数週間にかけてドルの下落が市場を主導することになる」と述べており、こうした見通しはわずか数日前までは主流のシナリオではなかったと説明した。
さらに、プリ氏は、7月の雇用統計によって関税政策が米経済に与える影響が明らかになったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切る可能性が高まったとも指摘している。
これに関連して、世界最大の資産運用会社ブラックロックのCIOリック・リーダー氏も、1日の分析ノートで「FRBが9月16日から17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.25ポイントではなく0.5ポイントの利下げに踏み切る可能性もある」との見方を示している。
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