新型コロナ対策として中国を離れた移民たちが、今アメリカと中国の間で板挟みの状況に置かれている。トランプ政権による移民取り締まりが強化される中、米国に留まることも、中国へ戻ることも困難になっているのが実情だ。

米『ニューヨーク・タイムズ』は3日(現地時間)、多くの中国人移民が「アメリカにとどまるべきか、それとも離れるべきか」という想定外の決断を迫られていると報じた。
彼らの多くは、厳しい検閲や政治的抑圧、「ゼロコロナ」政策による都市封鎖を逃れるために中国を後にした人々だ。米税関・国境警備局(CBP)の発表によると、2023年1月に中国政府がコロナ関連の国境管理を解除して以来、6万3,000人以上の中国人が許可なく南部国境を越えて米国に流入している。これはベネズエラやハイチ、エクアドルに次ぐ規模で、すでに全米で4番目に大きな移民集団となっている。
しかし、トランプ政権発足後は、米移民・関税執行局(ICE)がサンフランシスコやニューヨーク、ロサンゼルスなどの都市で大規模な摘発を進めており、違法入国者は次々と強制送還されている。
2023年初めに不法入国してロサンゼルスに住み始めた46歳の女性、ハン・リファさんも、ICEの取り締まりを受けてアマゾンの配達業を辞め、現在は自宅アパートで身を潜めている。「皆、恐怖に怯えている。アメリカでこんなことが起こるなんて」と話す彼女の声は、他の移民たちの心情を代弁している。
SNS上でも、中国移民の間で不安は広がっている。「帰国すべきか?」「誰がすでに戻ったのか?」といった投稿が中国語圏のソーシャルメディアで相次ぎ、かつて脱出方法を探していた人々が、今では帰国手段を模索しているという。
ロサンゼルス在住の中国系移民弁護士ホアン・シャオション氏によれば、「トランプ政権が昨年5月、1日の逮捕ノルマを3,000人に設定したことで状況は一気に厳しくなった」と説明。一部の移民は、カナダや他国への移動、または中国への帰国すら検討していると話す。
だが、中国へ戻ったからといって安泰とは限らない。不法な経路で出国したと見なされた場合、罰金だけでなく、懲役刑に処される可能性もあるからだ。
2023年に渡米したシュー・フォンさんは、友人2人が最近中国に帰国したが、自身は残る道を選んだという。2人とも帰国後に約1,000元(約2万円)の罰金を科され、うち1人はパスポートまで没収されたとされている。
中国系移民弁護士チョン・チュアンチュアン氏も「帰国した依頼人は非常に少数で、皆が後悔している」と語る。中には昨年末に強制送還され、帰国後に有罪判決を受けた人もいたという。
注目の記事