
ドナルド・トランプ米大統領が、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が進める「ガザ完全占領」計画に対して明確な反対を示していないと米メディア『アクシオス』が報じた。イスラエル内閣は7日、同計画に基づく戦闘拡大案の採決に踏み切る見通しだ。
ネタニヤフ首相は、ハマス側に停戦の意志が見られないとして軍事的圧力の強化が必要だと主張。首相側近は「唯一の選択肢は劇的な措置」と語り、軍事作戦のさらなる拡大に言及した。
仮に計画が承認されれば、イスラエル軍はガザ市や中部地域を中心に作戦を本格化させるとされる。アクシオスは、占領の完了には数カ月を要する可能性が高いと伝えた。
しかしこの動きに対しては、イスラエル国内からも反対の声が上がっている。とくに人質が拘束されている地域での軍事作戦が強行されれば、命の危険が伴うとの懸念が広がる。イスラエル国防軍(IDF)のエヤル・ザミール参謀総長もネタニヤフ首相に対し、「罠に足を踏み入れることになる」と警告したが、首相は意に介していない様子だ。
戦闘の拡大は、ガザ地区で深刻化する飢餓問題にも悪影響を与える恐れがある。こうした中、トランプ大統領は最近、スティーブ・ウィトコフ中東特使とともにガザの人道支援における米国の役割拡大について協議を行った。
米国とイスラエルが共同設立した「ガザ人道財団(GHF)」は、これまで物資配給の混乱が続いており、トランプ政権は関連予算を拡充し、配給拠点の増設を進める方針とされている。
トランプ大統領がネタニヤフの占領計画に反対を示していない背景としては、最近公開された人質の映像が大きな影響を与えたとされる。映像には、衰弱した人質が自ら地面を掘りながら「これは自分の墓だ」と語る様子が映っていたという。
米政府関係者は「その映像が大統領の判断に影響を与えた。イスラエルが必要な対応をとることを容認する姿勢だ」と話した。ただし、イスラエルによるガザ併合には賛同していないとも述べている。
トランプ大統領は前日、ガザ完全占領の可能性について問われた際、「答えられない。この問題はイスラエルに委ねられている」と語り、距離を取るような発言にとどめた。
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