
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザ地区の完全制圧を目指す軍事作戦の承認をめぐり、安全保障内閣を本日招集する。国内外からの反対意見や人質の生命に対する懸念がある中でも、作戦が承認される可能性が高いとの見方が強まっている。
7日(現地時間)、『タイムズ・オブ・イスラエル』などイスラエル各メディアは、ネタニヤフ首相は同日、安全保障内閣の高官らを集めた会議を開催すると伝えている。
会議では、ガザ全域の軍事制圧を狙う新たな地上作戦の承認が議論される予定だという。一部の閣僚は反対しているものの、可決に必要な過半数は確保されるとの観測が出ている。
ネタニヤフ首相は、国際社会からの人道的懸念や国内の停戦要求が高まる中でも、ハマス壊滅と人質救出を目的に、武力によるガザ掌握の必要性を訴えている。
作戦案によれば、イスラエル軍は4〜5個師団を投入し、約5か月かけてガザ全域を制圧、約100万人のパレスチナ住民を別地域に移住させるという。
具体的には、北部の最大都市ガザ市と中部の難民キャンプから軍事行動を開始し、住民の半数を南部ハンユニス近郊のアル・マワシ人道区域に移送する計画だ。まず、約100万人に避難命令を発令し、中部に病院などの民間インフラを整備した上で軍事侵攻に踏み切るとされる。
また、これまでイスラエルが地上軍を進入していなかった中部沿岸都市デイル・アル・バラへの作戦展開も視野に入っている。作戦中はイスラエル軍が支援物資の流通を直接管理し、ハマスによる横流しを防ぐとともに、住民への分配を徹底する方針だ。作戦遂行には、米国や他国から最大10億ドル(約1,471億9,790万円)規模の支援が見込まれているという。
作戦形態としては、大規模な地上侵攻ではなく、限定的な精密空爆による対応案も浮上しているが、ネタニヤフ首相はこれに難色を示している。
一方、エヤル・ザミール参謀総長をはじめとする軍上層部は、ガザ占領に否定的な立場を取っている。ガザを占領すれば200万人以上の住民に対する責任を負うことになり、イスラエル兵もゲリラ攻撃にさらされるとの懸念があるためだとされる。
何より、残る20人のイスラエル人質の生命が危険に晒される可能性がある。ハマスは、イスラエル軍が地下トンネル網に接近した場合、人質を処刑するよう命じたと報じられている。
ある高官は、イスラエルの現状をベトナム戦争に例え、「自らベトナムの泥沼に踏み込むようなものだ」と警鐘を鳴らしている。
軍内部でも対立が表面化している。イスラエル南部軍管区司令官が最近の会議で、空軍参謀長に対し空爆許可に関する不満をぶつけ、激しい口論に発展したという。
イスラエルの同盟国であるアメリカは、ガザの完全占領への関与は否定しているものの、明確な反対も表明していない。ドナルド・トランプ米大統領は「ガザ制圧の判断はイスラエルに委ねられている」と述べ、介入しない意向を示している。
ただし、米政府関係者は、イスラエルがガザの一部を併合することには反対の立場を取っており、人道支援の拡充に重点を置く方針だという。
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