
米半導体大手インテルが経営立て直しの切り札として迎えた新CEOタン氏を巡り、再び政治的圧力に直面している。ドナルド・トランプ米大統領が即時辞任を公然と要求し、株価は20ドル(約2,945円)を割り込んだ。業績不振に加え、経営安定性への不安が市場全体に広がっている。
7日(現地時間)のニューヨーク証券取引所で、インテル株は前日比3.14%安の19.77ドル(約2,910円)で取引を終了。3営業日ぶりの20ドル割れとなった。下落の背景には、トランプ大統領が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でタン氏の利益相反の可能性を指摘し、辞任を迫ったことがあるとみられる。
タン氏は今年3月にCEOに就任。過去には半導体設計自動化ソフトの大手ケイデンス・デザイン・システムズでCEOを務めたほか、ベンチャーファンド「ウォルデン・インターナショナル」を設立し、中国の半導体産業に積極投資してきた経歴を持つ。中でも中国国営の半導体メーカーSMICへの出資と取締役歴は、米政界の強い警戒を招いている。
SMICは高性能AIチップや軍用半導体を製造し、米当局から制裁対象となっている戦略企業だ。さらにタン氏はAI監視技術を持つ中国企業への投資でも、人権侵害への懸念が指摘されてきた。こうした過去の関与は単なる経歴問題にとどまらず、米中間の技術覇権争いが激化する中で、機密技術の流出リスクや実質的な利益相反の観点から注目を集めている。
現時点でインテルの取締役会は沈黙を守っているが、CEO人事が政治的火種となれば経営再建戦略は大きな打撃を受けかねない。半導体産業を巡る米中の対立が一層深まる中、グローバル企業トップの経歴や人脈までが政治問題化する局面が、いよいよ現実味を帯びてきた。
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