
中国当局が国内企業に対し、米半導体大手エヌビディアのH20プロセッサー使用を控えるよう通達したことが分かった。背景には、米ホワイトハウスが米国製AIチップに位置情報追跡機能や強制停止機能を付与できる可能性を示唆したことがあるとされる。
米ブルームバーグが12日(現地時間)、情報筋の話として報じたところによると、ここ数週間、中国当局は複数の国内企業に対しH20半導体の使用禁止を求める公文書を送付。特に国有企業や民間企業が政府や国家安全保障関連の業務にH20を用いることを厳しく禁じる指針が盛り込まれていたという。
関係者の一人は、この措置がエヌビディアのH20にとどまらず、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)製のMI380チップにも及ぶと明らかにした。
米政府は最近、エヌビディアとAMDに対し、中国向け輸出の売上高の15%を納付するよう求めた上で、中国専用AIチップの輸出を承認している。
中国当局が企業に送った書簡には、国産チップではなくH20を購入している理由や、その必要性、エヌビディア製ハードでのセキュリティ問題の有無などの質問が含まれており、これは中国国営メディアの報道とも一致する。
エヌビディアはこうした懸念に対し、自社チップに位置追跡や強制停止機能は存在しないと繰り返し否定している。
中国当局はこれまでも、特定の機関や施設で米テスラ車や米AppleのiPhone使用を制限してきたほか、米マイクロン・テクノロジ製チップの国内主要インフラでの使用を禁じた例もある。
関係者によれば、今回の指針は今後、より幅広い対象に拡大される可能性もあり、現時点ではまだ初期段階にあるという。
AMDはコメントを控えたが、エヌビディアは声明で「H20は軍事用途や政府インフラ用ではない」と強調。中国政府も「政府関連用途に米国製チップを使ったことはなく、今後も依存しない」としている。
中国政府のこうした姿勢は、エヌビディアやAMDの中国国内での販売再開に障害となる恐れがある。米政府関係者はAIチップの輸出承認について、中国との貿易合意の一環だと説明しているが、中国側は二国間協定の一部ではないと主張してきた。
中国側がこうした措置を取る背景には、エヌビディアの否定にもかかわらず、チップに位置追跡や遠隔停止機能が存在する可能性への懸念があるとみられる。トランプ政権の当局者は、この機能を使って禁輸チップの密輸を防げるか検討しており、米議会では先端AIチップの位置確認を義務づける法案も提出されている。
また、中国政府は国産半導体産業の競争力向上を狙い、外国製よりも国産チップの利用を奨励している。
H20はエヌビディアの最上位モデルより演算性能は劣るが、大容量メモリ帯域幅を備え、AI開発の推論段階に適している。このため、アリババやテンセント、バイトダンスなどの大手企業が好んで採用している。一方、中国の半導体最大手ファーウェイは市場需要を満たすだけの高性能チップの量産が難しいとされる。米政府の推計では、エヌビディア製チップを使えなくなれば、中国企業の先端AIモデルにおける推論実行コストは3~6倍に跳ね上がる可能性がある。
米ランド研究所のAI専門家レナート・ハイム氏は、「中国は国内市場でファーウェイの供給量を吸収できるだけの独占市場を形成し、不足分のみH20購入を許可するだろう」と指摘した。
ドナルド・トランプ米大統領は前日、H20チップを「旧式だ」と評し、「中国はすでに別の形で保有している」と述べた。
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