トランプが「プーチンのプードル」にならないためには…
NYT社説、「強力な対ロ警告を発すべき」と提言
「歴代米大統領はプーチンに翻弄されてきた」

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、「嘘つきは泥棒の始まり」の典型例だ。米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は12日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領がプーチン大統領と会談する際、「プーチンのプードル」ではなく、プーチン大統領が受け入れがたい強力な要求を突きつけるべきだと提言した。
NYTの国際問題コラムニスト、ブレット・スティーブンス氏は同日「生煮えのアラスカ首脳会談(A Half-Baked Alaska Summit)」と題したコラムでこう主張した。以下はその要約である。
トランプは世界最高の交渉人を自称するが、ロバート・クラフト(ニューイングランド・ペイトリオッツオーナー)から学ぶべき点がある。
クラフトは2005年にロシアを訪問しプーチンと会った際、2万5,000ドル(約370万円)相当のスーパーボウルの指輪を見せたところ、奪われてしまった。
クラフトは2013年、当時の出来事をこう回顧した。「プーチンが指輪をはめ、『これで人を殺せる』と言ってポケットに入れ、KGB要員3人に囲まれて立ち去った」という。
クラフトの回想に対し、プーチンは後に「恥ずかしいほど安っぽい指輪だった」と嘲笑した。
プーチンは「嘘つきは泥棒の始まり」の典型例だ。
東ドイツで西側の先端技術を盗んだKGB要員、サンクトペテルブルク副市長時代の汚職、ロシアの選挙操作や外国選挙介入、ロシア経済の略奪、ジョージアとウクライナへの侵攻など、彼の経歴は泥棒への道のりを如実に物語っている。
トランプは恐らく、泥棒プーチンを尊敬するだろう。
しかし、2018年ヘルシンキでプーチンと会談した際の屈辱を繰り返すつもりはないはずだ。当時、プーチンの米大統領選介入否定発言をそのまま信じたため、共和党を困惑させた。
歴代の米大統領たちはプーチンに翻弄されてきた。
ジョージ・W・ブッシュは「プーチンの目をしっかり見た。非常に率直で信頼できると感じた…彼の魂まで感じ取れた」と語り、バラク・オバマはプーチン側近のドミートリー・メドヴェージェフに「私の再選後は柔軟に対応できる」と語った。
トランプはプーチンとの会談後、「プーチンのプードル」と見られたくはないだろう。
そうならないためには、「領土交換」といった曖昧な議論ではなく、次のような対応をすべきだ。
今回の会談は、ロシアが面子を失わずに損失を最小限に抑える最後の機会として位置付けるべきである。
ロシアは100万人の死傷者、戦車や爆撃機の甚大な損失、北大西洋条約機構(NATO)の拡大、徐々に進む経済の窒息、果てしない戦争に直面している。
トランプはロシアへの制裁解除とウクライナのNATO加盟阻止を約束できる。また、2014年に不法占領したクリミア半島やウクライナ東部の一部地域の占領を認める可能性もある。
ただし、その代償は高額でなければならない。ロシア軍の完全撤退、ウクライナへの軍事支援継続、欧州連合(EU)加盟推進などを要求すべきだ。
プーチンはこれらを拒否するだろう。
しかし、トランプは拒否がもたらす結果をプーチンに明確に示す必要がある。次のような提案を行えば、トランプ自身にとっても有益だろう。
凍結されたロシア政府資産約3,000億ドル(約44兆円)を押収し、ウクライナの西側武器購入資金として使用。
上院の超党派対ロ制裁法案に署名。ロシア産ウランと石油を輸入する国に500%の関税を課す内容。
ウクライナ支援用の米国製武器に課されている技術的制限と射程制限を解除。
ウクライナとの防衛・技術協力協定を締結。米国はウクライナのドローン技術から多くを学ぶことができる。
F-16戦闘機部隊と各種武器の追加支援。
これらの提案は、プーチンが拒否すれば破滅的な結果になることを明確に示すものである。
プーチンがこれらの提案を拒否したことをロシア国民にも知らしめるべきだ。
1938年のミュンヘン会談では、列強国がチェコスロバキアの領土をナチス・ドイツに譲渡し、第二次世界大戦勃発の口実を作った。
トランプは、当時の英国首相であるネヴィル・チェンバレンに例えられることを嫌がるだろう。アラスカでの会談は、トランプが自身のリーダーシップの優位性を証明する機会となる。
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