ドナルド・トランプ米大統領の仲介で開催が取り沙汰されていたロシア・ウクライナ首脳会談は宙に浮いたままだという。
ロシア政府がウラジーミル・プーチン露大統領の会談相手として、ウォロディミル・ゼレンスキー・現ウクライナ大統領を認めることに難色を示しているためだ。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は21日(現地時間)、両首脳の会談に先立ち、ゼレンスキー大統領の「正統性」がまず問われるべきだと主張した。1978年1月生まれで現在47歳のゼレンスキー大統領は2019年5月20日に大統領に就任した。ウクライナ憲法上の任期は5年であり、ゼレンスキー大統領の任期は2024年5月19日に満了したことになる。本来であれば退任するか、大統領選を実施して再選を目指す必要があった。
しかし、2022年2月のロシア侵攻を受けて発令された戒厳令下では、大統領選を含む一切の選挙の実施が禁じられている。このためゼレンスキー大統領は任期満了後も1年3カ月以上にわたり職務を継続している。
プーチン大統領とロシア政権は以前からこの点を理由にゼレンスキー大統領の正統性に疑義を呈してきた。すでに任期を終えた大統領が戒厳令を延長し続けながら権限を保持するのは妥当なのか、という指摘だ。ただし、この状況を招いた根本原因がロシアのウクライナ侵略にある以上、ロシア側の問題提起は「自己正当化に過ぎない」との批判も根強い。

一方で、トランプ大統領自身も過去にゼレンスキー大統領を「選挙を行わない独裁者」と呼んだことがある。さらに「ゼレンスキー大統領は選挙を拒否しており、国内での支持率も低迷している」と主張した。
もっともこれは事実と異なる。ゼレンスキー大統領は今年に入り、正統性をめぐる論争に対応するため、一時的に戒厳令を解除して大統領選を実施する案を検討していた。
英メディアは3月、「政府に選挙準備を指示し、早ければ7月にも実施可能」と報じた。しかし、停戦協議が進展せず、ロシア軍によるミサイルやドローン攻撃も続いたため、最終的には戒厳令の延長を選んだ。
こうした中、ウクライナ野党「欧州連帯」の指導者で、ゼレンスキー大統領の最大の政敵であるペトロ・ポロシェンコ前大統領(2014年から2019年在任)は「戒厳令はロシアから国を守るためだけでなく、ゼレンスキー大統領による権威主義体制の確立にも利用されている」と批判した。
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