政府は企業の国内投資を促すため、新たに「設備投資促進税制」を導入する方針だ。来年から5年間の時限措置として設備投資に対する税制の優遇措置を拡充する。米国による高関税政策で企業の対米投資圧力が高まる中、国内投資を後押しする狙いがある。
「即時償却」導入も検討

26日付の『読売新聞』によれば、経済産業省は今月末にまとめる税制改正要望に同税制を盛り込む方針だ。投資額の一定割合を法人税から控除する税額控除方式で、投資規模に一定の要件は設けるが、企業規模は問わない。現在は大企業向けに、脱炭素化への設備投資などを対象とした減税措置があるが、新たな税制では幅広い分野を対象にするという。
対象には製造用機械やソフトウエアの導入、工場建屋などが含まれる見通しで、自動車や半導体工場など大規模な投資を呼び込むことを目指している。
加えて、投資額全体を初年度に一括して損金算入できる「即時償却」の導入も求める。これまでは耐用年数に応じて数年かけて減価償却してきたが、初年度に全額計上すれば税負担が軽減され、手元資金が増えることで新規投資を促す効果が期待される。
政府は企業収益の増加が賃上げにつながるとの期待も込める。長年の課題であるデフレ脱却を後押しする狙いだ。
背景には米独など主要国の投資優遇策がある。米国では7月、即時償却制度を恒久化する法案が成立。ドイツも同月、法人税率引き下げを含む460億ユーロ(約8兆円)規模の減税策を通過させた。
政府は2040年に国内投資額を200兆円に増やす目標を掲げるが、米国の関税政策の影響で電気自動車(EV)関連の国内投資の中止や延期が相次いでいる。『読売』は「企業の国内投資が海外投資に比べて伸び悩んでいる。米欧に遅れをとれば、国内投資の減速によって日本経済が停滞する懸念が強まる」と指摘した。
設備投資の勢い維持が課題
日本経済を下支えしてきた設備投資の増加基調を途切れさせないことも課題だ。今年4〜6月期の実質GDP速報値は前期比0.3%増、年率換算で1.0%増となり、5四半期連続のプラス成長となった。『日本経済新聞』は「成長の主役は企業の設備投資だ」と分析している。
4〜6月期の設備投資は前期比1.3%増と、1〜3月期(1.0%増)を上回った。『日経』は、特にソフトウエア投資が目立ち、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や建設関連投資が寄与したと説明した。
ただし下期の先行きは不透明だ。米国の関税政策などを背景に投資計画を見直す企業も増えている。日本政策投資銀行が今月発表した「2025年度設備投資計画」によれば、国内大企業の投資額は前年比14.3%増と見込まれるが、前年に示された21.6%増からは鈍化。人手不足や原材料高も重荷になっている。
さらに、政治面での不確定要素もある。自民・公明の与党が7月の参院選で敗北し、衆参両院で過半数を失ったことが税制議論の行方に影響を与えかねない。『読売』は「新税制導入には野党の協力が不可欠で、年末に向けた調整は難航が予想される」と報じている。
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