「なぜ男性だけ?」ドイツで「女性徴兵検討」に物議 「進歩ではなく逆行」と強い反発
軍の兵力増強を狙い兵役制度改革を推進
左派勢力が反発、反対デモも拡大

フリードリヒ・メルツ独首相が、自国軍の兵力増強に向け、女性徴兵の可能性も検討する考えを示した。
1日付の日刊紙ヴェルトによると、メルツ首相は先月29日、フランスのTF1テレビのインタビューで「志願制では兵力の確保が不可能なら、義務兵役に戻る仕組みが必要だ」と述べた上で、「憲法では女性を兵役義務の対象にできないが、実際にはその点も解決すべき課題だ」と語った。
首相は「まだ越えるべき障害は多いが、いまは出発点に立ったばかりだ」と強調し、憲法改正によって女性にも兵役義務を課す可能性を示唆した。
ドイツは2022年2月のウクライナ戦争勃発以降、再軍備の一環として徴兵制復活を含む兵役制度改革を議論してきた。現在18万2000人の連邦軍兵力を2035年までに26万人へ拡大することが政府の目標である。
国防省が策定した兵役法改正案では、まず志願制を基本とし、兵力確保が計画を下回る場合や国家非常事態が発生した場合には、議会の議決を経て徴兵制へ移行できるとされている。
ただし、女性徴兵を実現するには兵役法だけでなく憲法改正も必要となる。現行憲法は「男性には満18歳から軍隊、連邦国境警備隊または民間防衛隊で服務する義務を課すことができる」と定めており、女性を義務服務の対象から除外しているためである。
軍拡に反対する左派勢力はメルツ首相の発言に強く反発している。左派党の平和・軍縮政策担当スポークスパーソン、デジレ・ベッカー氏は「女性にまで武器を持つよう強制するのは進歩ではなく逆行だ」と批判し、「女性への兵役義務には断固反対して闘う」と表明した。
成人男性を念頭に置いた徴兵制復活そのものにも反対の声は根強い。反戦団体「ラインメタル武装解除連帯」は、兵役法改正案が閣議を通過した先月27日、連邦軍の募集事務所前で抗議デモを実施。3日後にはケルンで徴兵制・再軍備反対集会が開かれ、約3000人が参加した。
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