
北朝鮮の金正恩国務委員長が、中国・北京でロシアのウラジーミル・プーチン大統領に続き、習近平国家主席と会談した。中朝首脳会談は約6年ぶりとなる。習主席は「国際・地域問題で戦略的協力を強化し、共通の利益を守らなければならない」と述べ、金委員長も「国際情勢がどう変化しようと、両国の友好的な感情は変わらない」と応じた。今回の会談は、冷え込んでいた中朝関係改善の本格的な転機となる可能性が高い。
習氏「良き友人、良き同志」
中国国営メディアの『中国中央テレビ(CCTV)』や『新華社』によると、4日午後6時(現地時間)、金委員長は北京・人民大会堂で習主席と会談した。両首脳の会談は2019年1月の金委員長訪中、同年6月の習主席訪朝以来、6年余りぶりとなる。
習主席は「両国は運命を共にし、互いに助け合う良き隣人、良き友人、良き同志だ」と強調。「両国の友情は長い歴史を持っている」と述べた。会談ではティータイムや小規模の晩餐も催された。金委員長は中国の「抗日戦争勝利80周年軍事パレード」に出席するため、2日に訪中しており、2019年1月以来6年8カ月ぶりの訪中となった。
習主席は金委員長の軍事パレード出席について「両国の友好協力関係をさらに発展させる重要な機会を提供した」と評価。「中国共産党と政府は伝統的な友好関係を重視し、関係を維持・強化・発展させる用意がある。国際情勢がどう変わろうともこの立場は変わらない」と強調した。そのうえで「中国は北朝鮮が自国の実情に合った発展の道を歩むことを支持する」とし、高官交流や戦略的対話の強化、党・国家統治の経験共有を通じて相互理解と友情を深める考えを示した。さらに各分野での実質的な協力拡大に意欲を示した。
また、習主席は米国の対中圧力や関税対立を意識したかのように「前例のない困難の中でも、両国は国際・地域問題で戦略的協力を強め、共通の利益を守るべきだ」と呼びかけた。
金氏「経済協力を深めたい」
これに対し、金委員長は「抗日戦争勝利80周年軍事パレードは、中国の世界平和を守ろうとする確固たる決意を示し、中国の国際的地位と影響力を明確にした」と述べた。また「先代指導者たちは抗日戦争の中で深い友情を結んだ。我々はそれを大きく継承する義務がある」と語り、「国際情勢がどう変わっても両国の友好は不変であり、関係を絶えず発展させていくのは北朝鮮の確固たる意思だ」と強調した。
さらに、台湾など中国の核心的利益に関して中国の立場を支持する姿勢を示し、「中国が国家主権と領土を守ることを支持する」と表明。続けて「相互利益と経済・貿易協力を深め、さらなる成果を上げたい」とも述べた。
習主席は金委員長に単独晩餐を用意するなど、特別待遇を行った。金委員長が北京に到着した際には、党序列5位の蔡奇(ツァイ・チー)党中央書記処書記や王毅(ワン・イー)外交部長が出迎えた。軍事パレード後のレセプションでも習主席の左隣に金委員長が座るなど、プーチン大統領と並ぶ「序列2位級」の厚遇を受けた。外交関係者は「軍事パレードで最高レベルの待遇をしたうえ、単独晩餐まで実施したのは、中国の対北朝鮮観を鮮明に示すものだ」と分析している。
北朝鮮は近年「安保はロシア、経済は中国」との方針を示している。ロシアとはウクライナ戦争を契機に「血盟」と呼ばれる関係を築いたが、経済制裁で苦境にある北朝鮮にとって中国の支援は不可欠だ。北朝鮮の貿易の約9割は中国に依存しており、今回の会談でも主要議題は経済協力だったとみられる。専門家の間では、中国主導の反米連携の一角として存在感を示した金正恩氏が、これを足がかりに中国との経済協力をさらに強化しようとしているとの見方が出ている。
北朝鮮が今年開業した元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区に大規模な中国人観光客を誘致するためにも、中国の直接・間接的な支援と協力は不可欠とされる。金委員長は会談後、北京駅から帰国の途につき、5日午後に平壌へ到着する見通しだ。
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