ドナルド・トランプ米大統領が国防総省(Department of Defense)の名称を「戦争省(Department of War)」に戻す行政命令に署名した。第二次世界大戦直後に「防衛」を前面に打ち出して改名された名称を、76年ぶりに「戦争」に戻す措置である。トランプ政権は「戦士の気概(warrior ethos)」の回復と、敵への強力な警告を目的としている。
フォックス・ニュースによると、ホワイトハウスは4日(現地時間)、トランプ大統領が5日に国防総省の名称変更のための行政命令に署名する予定だと確認した。なお、行政命令発行後、国防総省の名称が直ちに変更されるわけではない。APによれば、政府機関の名称変更は議会の立法事項に属する。まず、行政命令を通じて「戦争省」を国防総省の副称(secondary title)として使用することが承認される。これにより、ピート・ヘグセス国防長官らは、公式文書や対外的なコミュニケーションにおいて「戦争省長官(Secretary of War)」という名称を使用できるようになる。さらに、行政命令には将来的に議会の立法を経て公式名称を恒久的に変更するための措置を講じるよう指示が含まれている。

トランプ大統領は、名称変更の正当性を「勝利の歴史」に見出している。先月の記者会見で彼は「『戦争省』時代、我々はあらゆる面で勝利した」と述べ、「当時に戻るべきだ」と語った。1789年に創設された戦争省は、第一次および第二次世界大戦の勝利に寄与した。その後、米国政府は1949年に戦争省の名称を国防総省に変更した。
ヘグセス長官はフォックス・ニュースのインタビューで「我々は国防総省ではなく戦争省とともに第一次・第二次世界大戦に勝利した」と述べ、「大統領がおっしゃる通り、我々は防衛だけでなく攻撃も行う」と明言した。彼は既に国防総省内の会議室の名称を「W.A.R. Room」に変更するなど、軍内部の「戦士の気概」回復運動を主導している。ホワイトハウスは、今回の措置が「米国の国益を守るため、戦いに臨む準備が整っているというシグナルを敵に送ることになる」と説明している。
ただし、一部からは象徴的な名称変更に伴う費用が問題視され、名称変更の根拠が弱いと指摘されている。ポリティコは、世界中の数百の米軍基地や政府建物に存在する国防総省の公式印章、看板、書類フォーマットなどを全て変更するのに数十億ドルが必要になる可能性があると報じた。これは、国防予算の無駄を削減しようとする現政権の方針と矛盾する。
軍事専門家は、名称変更が実質的な国防力強化とは無関係な見せかけの行政措置であると批判している。米国民主主義防衛財団(FDD)のブラッドリー・ボーマン上級国長官はワシントン・ポスト(WP)に対し、「中国が太平洋で米軍を撃退する戦闘力を急いで整えている状況で、国防総省の名称変更を行っても何も変わらない」と述べた。さらに彼は、「新しい看板や名札、書簡のヘッダーを作成するための膨大な費用を、我々の兵士が任務を遂行し、家族とともに帰還するための訓練や武器の確保に充てるべきだ」と付け加えた。
国際社会に向けたメッセージについても懸念が高まっている。ロシアのウクライナ侵攻により国際秩序が揺らぐ中、世界最強国である米国が「国防」ではなく「戦争」を前面に出すことは、不必要な誤解を招き、軍事的緊張を高める可能性があると指摘されている。また、トランプ大統領がノーベル平和賞受賞を目指す努力と矛盾する行動だという批判もある。
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