
かつて「コスパ最強AI」として世界を驚かせた中国発の生成AI「DeepSeek」が、第4四半期にAIエージェントを投入する計画を明らかにした。しかし、その発表にもかかわらず市場の反応は冷ややかだ。利用者数は急減し、存在感の低下が顕著になっている。
韓国のモバイル分析企業IGAWorksの「モバイルインデックス」によると、8月のDeepSeekの月間アクティブ・ユーザー(MAU)は7万3,272人。1月のサービス開始直後には40万人を突破していたが、わずか8カ月で82%減少した。
アプリの新規インストール数も1月の39万6,074件から8月は1万2,720件へと97%の減少を記録し、事実上ユーザーの関心が失われた形だ。
主要メディアの報道によれば、同社は第4四半期にAIエージェントモデル「R2」を投入する予定だという。創業者の梁文峰(リャン・ウェンフォン)氏が主導し、最小限の指示で複雑なマルチタスクを自動で処理する仕組みを開発しているとみられる。
DeepSeekは今年1月、低コストながら高性能な推論モデル「R1」を公開。米OpenAIの「ChatGPT 4o」を上回る性能をうたい、NVIDIAのH800 GPUわずか2,000基で学習したと発表し、1万6,000基以上の高性能GPUを投入したChatGPTとの対比で「中国ITの底力」を誇示する事例とされた。いわば「GPUは多いほど良い」という常識を覆した格好で、当時は「DeepSeekショック」とも呼ばれた。
しかしその後、過剰な個人情報収集への懸念や、中国当局による検閲問題に直面。韓国では一時的に利用停止措置がとられ、再開後もユーザー離れは止まらなかった。
一方で競合サービスは躍進している。ChatGPTのMAUは1月の約314万人から8月には1,200万人超と4倍に拡大し、韓国国内では圧倒的なシェアを維持している。今月初めに最新の「GPT-5」が公開され、賛否は分かれているものの利用者は引き続き増加している。
米PerplexityのMAUも1月の約33万人から8月には約83万人へと2.5倍に増加。Googleの「Gemini」も、1月には1万人未満だった利用者が8月には8万8,715人へと8倍以上に膨らんだ。主要AIの中で利用者が大幅に減少したのはDeepSeekだけだ。
AI性能を比較する国際サイト「Artificial Analysis」でも、DeepSeekは「AI知能」分野でGPT-5、Groq-4、Gemini 2.5などに後れを取り、10位にとどまった。
専門家からは「DeepSeekショックは、モデル性能そのものというより『低価格・高性能』に依存したものだった」との指摘が相次ぐ。韓国KAISTのキム・ギウン教授は「強力なモデルをオープンソースで公開した点は画期的だったが、サービス自体に革新性があったわけではない」と分析している。
さらにこの間、米Groqの「Groq-3」やOpenAIの「GPT-5」などが相次ぎ登場。Googleも「Gemini 2.5」を基盤とするカスタマイズ版のAIモードを投入するなど選択肢が増え、DeepSeekの優位性は失われた。
ある業界関係者は「アリババが1兆を超えるパラメーターを持つ大規模言語モデル『Qwen3 Max』を発表するなど、AIの性能は急速に向上している。最終的には『使いやすく、慣れ親しんだトップサービス』にユーザーが集中する」と指摘した。
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