
「平和の仲介者(Peace Maker)」と「米国を再び偉大に(MAGA)」を掲げる米国のドナルド・トランプ大統領は、内憂外患に直面している。彼は紛争の調停者を自称し、終戦を約束したものの、ガザとウクライナ戦争には終結の兆しが見えず、米国内では不法移民取締りや中国人留学生受け入れを巡り、保守勢力やMAGA支持層に亀裂が生じ始めている。
イスラエルは9日(現地時間)、ガザ戦争の「仲介国」であるカタールの首都ドーハに滞在するイスラム組織ハマスの幹部を標的に空爆を実施した。米国には攻撃計画を事前に通知していなかったとされ、その行動は波紋を呼んでいる。カタールは米国やエジプトとともに停戦交渉の仲介国を務めており、今回の攻撃はイスラエルがカタールで行った初の軍事行動になった。
トランプ大統領は同日夜、ワシントンDCのホワイトハウス近くのレストランで記者団に対し、「イスラエルが空爆を事前に通知したのか」との質問に首を振り、「いいえ、全体の状況に満足していない。決して良い状況とは言えない」と不満を露わにした。イスラエルは前日に「トランプ大統領が提案したガザ地区の停戦案を受け入れる」と表明したものの、米国の制止を振り切って空爆を継続し、対立を深めている。
ノーベル平和賞を狙うトランプ大統領は、最近、インド・パキスタン、コンゴ民主共和国・ルワンダ、アゼルバイジャン・アルメニア、カンボジア・タイなど、世界各国の紛争終結を外交的成果として次々とアピールしている。しかし、重要な「二大グローバル戦争」では成果を挙げられていない。
ウクライナ戦争の終戦交渉も実質的に頓挫している。トランプ大統領は先月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談で終結に向け前進したかに見えたが、その後、ロシアは交渉どころか、7日にはウクライナの首都キーウの政府庁舎を狙い撃ち、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との首脳会談も拒否している。外交的成果が乏しい中、トランプ大統領が次の一手として、北朝鮮の金正恩国務委員長との対話に舵を切る可能性が取り沙汰されている。
さらに、トランプ大統領は不法移民・留学生問題や、性犯罪者ジェフリー・エプスタイン氏に関連する文書の公開を巡ってMAGA支持層の反発を招いている。現代自動車グループとLGエナジーソリューションのバッテリー合弁工場が取り締まられたジョージア州は共和党優勢の地域であり、地域住民や地元メディアからは「地域経済および米国への投資を萎縮させる」との批判が高まっている。
また、トランプ大統領は先月末、「中国人留学生60万人を受け入れる」と、従来の積極的なビザ取消し方針から180度転換したが、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州)や保守系インフルエンサーのローラ・ルーマー氏など、MAGA派の政治家から猛烈な非難を浴びている。トランプ大統領の支持率は下落傾向が続いている。
米CBS放送と世論調査会社「YouGov」が7日に発表した調査結果によると、トランプ大統領の国政運営支持率は就任当初と比べ9%低下し、44%にとどまっているという。
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