EU委員長2期目初の年次政策演説…当初は2027年末までの輸入停止計画、米国は「即時停止」を要求
イスラエルへの強硬措置も表明、対米貿易合意への批判に反論

欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は10日(現地時間)、フランス・ストラスブールの欧州議会で年次政策演説を行い、ロシア産化石燃料の輸入停止時期を当初計画より前倒しする可能性を示唆した。
フォン・デア・ライエン委員長は「パートナー国と協調し、第19次対ロシア制裁措置を準備している」と述べ、「特にロシア産化石燃料からの脱却を加速する方策を検討している」と強調した。
EUはウクライナ戦争勃発後、ロシア産天然ガスや石油の輸入を大幅に削減し、残る輸入も段階的に停止するロードマップを6月に発表している。当初は2027年末までに域内から全面的に排除する計画だった。しかし今回の発言は、米国からの追加制裁圧力を受け、停止時期を前倒しする意向を示したものとみられる。
米国のクリス・ライト・エネルギー長官は8日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで「欧州が明確にロシア産ガス・石油を拒絶すれば、米国がより強硬な制裁へ傾く上で大きな後押しになる」と発言した。さらにドナルド・トランプ米大統領は9日、米・EU高官会議に電話参加し、ロシア産石油を購入するインドや中国に最大100%の関税を課すよう求めたと報じられている。

フォン・デア・ライエン委員長はまた、凍結されたロシア資産の収益をウクライナ支援に活用する「賠償金ローン」構想を言及しつつ、元本没収は現時点で検討していないとの立場を示した。
さらに演説ではイスラエルへの強硬措置にも踏み込み、EU執行委員会としてイスラエル向けの二国間支援を停止すると発表した。加えてEU理事会に対し、イスラエルの極右閣僚や入植者への制裁、EU・イスラエル協力協定の一部停止を提案する方針を明らかにした。イスラエルにとってEUは最大の輸出市場であり、実現すれば経済的打撃は避けられないとみられる。これらの措置は、イスラエルのガザ戦争による人道的危機が壊滅的な水準に達しているにもかかわらず、EUが適切な外交対応をしていないとの批判を意識したものと解釈される。
ただし制裁発動には加盟国の承認が必要で、可決要件を満たすのは容易ではないとの見方もある。
EU委員長が毎年9月に行う年次施政方針演説は、米国大統領の一般教書演説を模倣したもので、2010年にジョゼ・マヌエル・バローゾ元EU委員長が始めて実施して以来、EUの年間最大行事として定着している。
今回の演説は、フォン・デア・ライエン委員長にとって、昨年12月に2期目の5年任期を開始して以来、初めての演説となった。
フォン・デア・ライエン委員長は演説で、第2期政権発足後に最大の難題とされてきた対米貿易合意について、正面から反論した。
フォン・デア・ライエン委員長は「(米国との)市場アクセスを維持することが合意を結んだ理由であり、可能な限り最善の合意を確保した」と述べ、「この合意はわが企業を他国と比べて相対的に優位な立場に置くものだ」と強調した。
さらに「一つはっきりさせておきたいのは、環境規制であれデジタル規制であれ、我々のルールは自らの手で決定するということだ」とも語った。
これに対し、トランプ大統領はEUと米国の貿易合意の締結後に発表されたEUによるグーグルへの課徴金賦課について「非常に不公平だ」と批判し、米通商法301条に基づく報復措置の可能性を示唆している。
米通商法301条は、米国の貿易を制限または負担を課したりする外国政府の不当・不合理・差別的な行為や政策、慣行に対応するため、行政府に与えられた権限である。
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