
米国のドナルド・トランプ大統領は、9日(現地時間)、カタールの首都ドーハへの空爆後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話で通話し激怒したと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が10日に報じた。
WSJは米政権高官の発言を引用し、トランプ大統領がネタニヤフ首相に対し、ドーハへの空爆は賢明ではなかったと非難し、カタールが米国の同盟国であり、ガザ地区の休戦調停国であることを強調したと伝えた。さらに、トランプ大統領はイスラエル軍が攻撃中に、イスラエルではなく米軍から空爆の事実を知らされたことにも怒りを示した。
これに対し、ネタニヤフ首相は「攻撃開始までの時間が非常に限られており、その機会を逃すまいとした」と釈明したとされる。その後、トランプ大統領はネタニヤフ首相と再度通話し、二度目の通話では攻撃の成否を尋ねるなど、友好的な雰囲気の中で行われたと関係者は述べた。
これに先立ち、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、イスラエルによるカタールへの空爆後にトランプ大統領がネタニヤフ首相と通話したと発表したが、具体的な内容は明かさなかった。
WSJは米政権高官の発言を引用し、トランプ大統領がこれまでイスラエルを積極的に支持してきたものの、最近ではネタニヤフ首相への失望感が高まっていると指摘した。ネタニヤフ首相は、米国の同意なくトランプ大統領の中東地域政策と相反する攻撃的な行動を続け、トランプ大統領を窮地に陥れていると伝えた。
トランプ大統領は、湾岸諸国(サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン)との関係改善を中東戦略の要と位置づけており、5月にカタールを訪問した際には4億ドル(約589億7,983万円)相当の豪華旅客機を贈呈されるなど、特別な関係を誇示していた。
戦略国際問題研究所(CSIS)・中東プログラム部門ディレクターのモナ・ヤクービアン氏(Mona Yacoubian)は「今回の事態はトランプ大統領の平和構想を著しく損なうものだ」と述べるとともに、「トランプ大統領の中東における一貫性の欠如が、各国に独断的な行動の余地を与えた側面もある」と指摘した。

CNNは、トランプ大統領がカタール攻撃を事前に把握しながら阻止できなかったならば、その行動がトランプ大統領の信頼性に深刻な打撃を与えたことになると指摘した。ネタニヤフ首相の側近であるイスラエルのロン・デルメル戦略担当相は、カタール攻撃の前日にトランプ大統領の中東特使スティーブ・ウィトコフ氏と面会したが、カタール攻撃については一切触れなかったという。後にこれを知ったホワイトハウスは激怒したとCNNは伝えた。
CNNは、米国とイスラエル間の不信感が深まる可能性があり、トランプ大統領が意欲的に推進してきた中東地域におけるアブラハム合意(イスラエルとアラブ諸国間の関係正常化協定)の拡大も実現可能性が低くなったと分析した。
さらに、CNNは、政治的・財政的に米国と協力してきた湾岸諸国が対米関係の再検討に踏み切る可能性があると予測している。トランプ大統領は5月にサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、3兆ドル(約442兆3,065億円)規模の取引で合意を図った。
カーネギー国際平和財団のH・A・ヘリヤー氏は「これらの国々は、将来の攻撃を抑止するために何ができるか模索するだろう」と述べ、「自国の同盟国から自国を守れなかったパートナー(米国)ではなく、他の安全保障体制への投資を検討するだろう」と語った。
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