
米国のドナルド・トランプ大統領は10日未明(現地時間)、ロシアの無人機がポーランド領空を侵犯した事件について「これからだ(Here we go)」と発言した。ロシア原油輸出を狙った第2次制裁を示唆したものだが、海外メディアは「制裁を口にするだけで実行には至っていない」と批判している。
トランプ氏はこの日、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに「ロシア無人機のポーランド領空侵犯にどう対応するのか」と書き込み、こうした見解を示した。
米CNNはこの発言について「事件の余波がどこへ向かうのかを巡る曖昧な示唆だ」と分析。第2次制裁をほのめかしたものの、具体的な対応策は含まれていないと指摘した。
CNNはさらに「ウクライナとロシアの衝突を終わらせようとするトランプ氏の努力は失敗に終わった」と報じ、「今回の事件はその失敗後にむしろ対立が激化したことを示す事例だ」と論評した。続けて「戦争終結に向けた進展はほとんど見られない」とし、「プーチン露大統領への不満は高まっているが、インドへの追加制裁以外に新たな措置は講じられていない」と伝えた。
トランプ米大統領は先月、西側の対ロ原油輸出制裁を回避してロシア産原油を安値で購入し巨額の利益を得ているとして、インドに25%の追加関税を課した。その後、ロシア産原油を大量に輸入するインドや中国に対し100%の関税を科すよう欧州連合(EU)に要請したと報じられたが、実際にはまだ実行されていない。戦争当事国であるロシアに対する直接的な制裁も行われていない。
朝日新聞は「(トランプ大統領の)対ロけん制は曖昧な内容にとどまっている」と指摘した。
一方、米共和党内では対ロ制裁を実行すべきだとの声が高まっている。共和党のトム・ティリス上院議員は「ロシアは米国をピアノのようにもてあそんでいる」と痛烈に批判。プーチン露大統領が先月、アラスカ州アンカレッジでトランプ氏と会談し、さらに3日には中国の抗日戦争勝利記念行事で習近平国家主席や北朝鮮の金正恩委員長と会談した事実に触れ、「プーチン氏は望むものをすべて手にした」と述べた。さらに「プーチン氏がいずれ西側の民主主義国家を崩壊させようとすることを認めなければならない。彼は平和を望んでいない」と警告した。
CNNによると、共和党指導部の間では、共和党のリンジー・グラム上院議員と民主党のリチャード・ブルーメンタール上院議員が共同提出した対ロ制裁法案を採決にかけるべきだとの主張が強まっている。法案は、ロシア産のウランや化石燃料を購入しながらウクライナへの軍事支援を行っていない国に対し、最大500%の関税を課す内容で、事実上インドや中国を標的としている。
グラム議員はX(旧ツイッター)への投稿で、トランプ大統領のトゥルース・ソーシャルでの発言に触れつつ、「骨まで砕くほど強力な新制裁案と関税措置を可決する準備ができている」と強調した。
一方、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は議会で、同日未明にロシアの無人機とみられる飛行体19機がベラルーシ方面から侵入したと明らかにした。ポーランド軍はNATO(北大西洋条約機構)加盟国と連携し、脅威と判断された4機を撃墜したという。ロイター通信によれば、2022年にロシアがウクライナに侵攻して以来、ポーランドやルーマニアなど周辺国の領空が侵される事例は複数あったが、撃墜に至ったのは今回が初めてだという。
日本経済新聞は、今回の事件について「ロシアがNATOを試した可能性がある」と分析した。反撃を招かない範囲で挑発を行い、NATOの対応力を測ろうとした可能性があるという。また同紙は、トランプ大統領が3日、ポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領とホワイトハウスで会談し、「ポーランドが望むなら米軍をさらに駐留させる」と発言したことを取り上げ、「米国を威嚇する意図も明確に読み取れる」と指摘した。
一方、ロシアは今回の事件への責任を否定した。クレムリンは「国防省の所管事項だ」として回答を避け、国防省は「無人機によるウクライナ西部への攻撃は認めるが、ポーランド国内の標的を攻撃する計画はなかった」と主張した。ロイター通信によれば、ポーランド駐在のロシア外交官は「無人機はベラルーシからではなく、ウクライナ方面からポーランドに飛来したものだ」と反論したという。
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