「イスラエル・ボイコット」各分野へ拡大
ガザ「ジェノサイド」批判が国際的に拡散

各国大学・学術団体、次々と関係断絶
スペイン自転車大会で抗議デモがコース占拠
映画人4,500人超が署名 ボイコット拡大
放送局も「ユーロビジョン不参加」で圧力
イスラエルがガザ地区で行っている軍事行為が「集団虐殺(ジェノサイド)」に当たるとの国際社会からの批判が高まるなか、学界や文化・芸術界、スポーツ界においてもイスラエルをボイコットする動きが広がっている。先月、国連機関などで構成される統合食料安全保障段階分類(IPC)がガザ地区での飢饉発生を宣言したのを機に、ガザ戦争の終結を求める声が一段と強まり、国際社会におけるイスラエルの孤立は深まっている。
英紙『ガーディアン』は13日(現地時間)、世界各地の大学や学術機関がイスラエルとの関係を断つ事例が相次いでいると報じた。
アイルランドのトリニティ・カレッジ(Trinity College)は6月、イスラエルの大学との投資や商業的関係、学術・研究協力をすべて終了し、交換留学プログラムも停止することを決定した。同大学の寄付金は13のイスラエル企業に投資されていたが、そのうち3社はパレスチナ占領地での違法入植地建設に関与する企業リストに含まれていたと、現地メディア『アイリッシュ・タイムズ』は伝えている。
オランダのアムステルダム大学は今年3月、イスラエル・ヘブライ大学との学生交換プログラムを中止した。昨年末にはヨーロッパ社会人類学者協会が、イスラエルの戦争犯罪やガザでの集団虐殺疑惑を理由に、同国の大学や研究所など学術機関との協力を断つことを決定している。
さらに、ノルウェーのベルゲン大学やノード大学など5校、ベルギーのゲント大学、スペインのバルセロナ大学も、テルアビブ大学などイスラエルの機関・企業との協力を停止する方針を示した。
イスラエル出身の歴史学者で政治学者のイラン・パペ氏は「学界のボイコットは、イスラエルの学術機関が抑圧体制の有機的な一部であるという責任を直視させる」と指摘した。
『ガーディアン』はまた、学界におけるイスラエル・ボイコットの拡大により研究資金の供給が減少し、大学だけでなく科学技術分野に依存するイスラエル経済全体に深刻な影響を与える可能性があると警告している。イスラエルは2021年以降、欧州連合(EU)が科学研究を支援する「ホライズン・ヨーロッパ(Horizon Europe)」プログラムから8億7,590万ユーロ(約1,520億円)の資金を受け取ってきた。しかし、欧州委員会は7月、サイバーセキュリティや無人機、AIなど軍事的に利用され得る分野についてはイスラエルへの支援を停止する案を提案した。
スポーツ界でもボイコットの動きが見られる。14日にスペインで開かれた世界3大サイクルロードレースの一つ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」では、イスラエルチームの出場に反対するパレスチナ支持デモ隊が道路を封鎖し、ゴールまで43㎞を残してレースが中断された。デモ隊がマドリード市内の最終第21区間のコースに乱入したため、大会組織委員会は続行不能と判断し、早期終了を宣言した。
映画界でも著名人による動きが相次ぐ。エマ・ストーン氏、アンドリュー・ガーフィールド氏、マーク・ラファロ氏らハリウッド俳優や、映画『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督、ホロコーストを題材にした『関心領域』でカンヌ国際映画祭の審査員大賞を受賞したジョナサン・グレイザー監督など、映画人4,500人余りがイスラエル映画団体との協力を拒否する誓約書に署名した。この運動は「フィルム・ワーカーズ・フォー・パレスチナ(Film Workers for Palestine)」という団体が主導している。
音楽界でも、欧州最大のポップ音楽祭「ユーロビジョン」へのイスラエル参加をめぐり、各国の放送局が相次いでボイコットの方針を表明している。仮にボイコットする放送局が増えれば、来年ウィーンで開催予定の大会に参加する国は15~20か国にとどまる可能性がある。例年は37~40か国が参加している。
美術界では昨年、第60回ヴェネツィア・ビエンナーレでイスラエル館が反対世論に直面し開館できなかった。この展示で作品発表を予定していた作家ルス・パティールは「ガザでの停戦とイスラエル人質解放の合意が成立すれば開館する」と語っていた。
一方、イスラエル・ボイコットの広がりに反対する声もある。英国大学協議会の報道官は「包括的な学術ボイコットを支持しない。学問の自由を侵害するためだ」と強調した。米グローバルメディア大手パラマウントもハリウッド映画界のイスラエル・ボイコット声明を批判し、「国籍を理由に創造的な芸術家を沈黙させることは、より良い理解や平和の促進にはつながらない」と表明した。
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