65歳以上が3割、100歳以上は10万人に迫る中で、自治体の「長寿祝い金制度」が相次いで見直されている。

15日付の朝日新聞によると、宮城県や一部の自治体では高齢者人口の増加により、長寿祝い金の支給が大きな財政負担となっているという。9月15日は「敬老の日」であり、毎年9月の第3月曜日を祝日と定め、長寿と高齢者を敬う趣旨で記念行事を行っている。
かつては「敬老祝い金」や「長寿祝い金」と呼ばれ、77歳(喜寿)、88歳(米寿)、100歳(百寿)といった節目を迎えた高齢者に対し、数千円から数十万円に及ぶ祝い金が支給されてきた。制度は1960年代から各自治体が独自に導入し、全国に広がったとされる。
しかし、支給対象者が急増したことで「財政リスクが大きい」との懸念が広がり、多くの自治体で見直しが進んでいる。
たとえば、宮城県南東部の名取市では、従来は
・77歳、80歳、85歳:各5,000円
・88歳:1万円
・90歳:2万円
・95歳:3万円
・99歳:5万円
・100歳:20万円
・101歳以上:毎年2万円
を支給してきた。しかし今年からは金額を据え置いたまま、支給の節目を77歳・88歳・100歳の3回に縮小し、従来は100歳になる高齢者は累計32万5,000円を受け取れたが、新制度では21万5,000円に減少する。
多賀城市も今年から支給額を減額し、88歳は従来の1万円から5,000円に、100歳は20万円から5万円に縮小された。岩沼市では昨年から、99歳への祝い金を5万円から1万円に、101歳以上に対しては毎年最大10万円を支給していたが、現在は花束と祝辞のみに変更された。

101歳以上に毎年祝い金を支給していたが、現在は祝辞のみ
こうした変化は宮城県に限らず全国各地で進んでおり、祝い金そのものを廃止する自治体も出ている。名取市の担当者は「介護保険事業で市の負担が増えている状況を考えると、全高齢者に現金を配るより、介護予防や生活困難な高齢者の支援に集中したい」と説明している。削減された財源は独居高齢者向け緊急通報システム、補聴器購入費助成、歯科健診事業などに活用される予定だという。名取市は昨年、祝い金に3,006万円を支出したが、制度改正により今年は約1,600万円に削減される見通しだという。
一方、現金の支給を心待ちにする高齢者も多く、各地の議会では反対意見も出ている。名取市では当初案より削減幅を緩和する修正案が議員から提出され、採択された。また大和町では昨年、敬老祝金支給条例の改正により支給を廃止する案が提出されたが、一部議員の反発で撤回となった。その後、削減幅を緩和する修正案が再提出され、可決された。
朝日新聞が宮城県内14市を調査したところ、敬老祝い金の制度自体がないのは大崎市のみだったという。大崎市は旧古川市時代の2005年に制度を廃止し、現在は88歳に木製食器、100歳に記念牌と花束を贈呈している。一方で最も手厚い支援を続けているのは富谷市で、80歳に5,000円、88歳・90歳・100歳までの合計で最大33万5,000円を支給している。富谷市は2018年に一部縮小した上で、現行制度を維持している。
10人に3人が65歳以上
一方、総務省が敬老の日を前に発表した推計人口によると、65歳以上の高齢者は3,619万人で、前年より5万人減少した。1950年以降で高齢者人口が減少したのは、2023年に続き今回が2回目となっている。総人口に占める高齢者の割合は29.4%で、前年より0.1ポイント上昇し過去最高を更新した。共同通信は「4,000万人以上の人口を持つ国の中では最高水準だ」と伝えている。
また、高齢になっても働く人が増えており、昨年の高齢者の就業率は25.7%で、前年より0.5ポイント上昇、就業者数は930万人と21年連続で増加し、過去最多を記録した。特に65〜69歳では就業率が53.6%と半数を超え、前年より1.6ポイント上昇した。70〜74歳は35.1%、75歳以上は12.0%となっている。
100歳以上の高齢者が10万人に迫る…55年連続で増加
厚生労働省の集計によると、100歳以上の人口は9万9,736人で、前年より4,644人増加し、55年連続で増加したという。1963年以降、1981年に1,000人を超え、1998年に1万人、2012年に5万人を突破している。
性別では女性が8万7,784人、男性は1万1,979人で、女性が男性の7.3倍を占めた。人口10万人あたりの100歳以上高齢者は80.58人となった。
最高齢者は奈良県の賀川滋子さん(114歳)、男性では静岡県の水野清隆さん(111歳)が最高齢とされる。読売新聞は「医療の進歩や健康意識の高まりを背景に、100歳以上の高齢者は今後も増加が続く見込みだ」と伝え、2025年度(2025年4月〜2026年3月)には100歳を迎える、または既に100歳に達した人口が5万2,310人となり、2024年度より4,422人増えると予測している。
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