「関税ショックに供給不足まで」…アルミ国際価格に悪材料が重なる

米国のドナルド・トランプ大統領が打ち出した関税ショックに加え、異例の供給不足や需要増が重なり、国際アルミニウム価格が高騰していると英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が16日報じた。
まず米国では、トランプ大統領がアルミニウムに50%の関税を課したことを受け、価格は年初から上昇傾向を示している。米国向けアルミニウムに対し、ロンドン取引価格に上乗せされるいわゆる「ミッドウエスト・プレミアム」は177%急騰し、ポンド当たり70セントを突破した。これは10年以上ぶりの高水準となる。
アルミニウムは自動車や包装材に広く使用される基礎素材だが、供給面では中国による生産抑制や各地域の製錬能力の制約が影響している。中国は2017年、過剰生産能力の是正を目的に年間生産量の上限を4,500万トンに設定した。
さらに2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機に欧州のエネルギー価格が高騰し、多くのアルミニウム製錬所が操業停止に追い込まれた。一方、インドネシアやインドなど新興国での増産は思うように進んでいない。
問題は、こうした価格上昇が今後さらに深刻化しかねない点にあるという。
イタリア金融大手ユニクレディトの投資戦略家トーマス・ストローベル氏は、「中国の景気刺激策による継続的な需要が供給制約と重なり、年末まで価格上昇が続く見通しだ」と指摘した。
また、モルガン・スタンレーの中国原材料調査責任者レイチェル・チャン氏も「アルミニウムは歴史的に供給過剰の産業だったが、いまや不足局面に入っている」との見方を示した。
在庫不足が来年まで続くとの懸念もある。バンク・オブ・アメリカのアナリストらは、今年のアルミニウム需給は余剰だが、来年には不足に転じ、現在1トンあたり約2,700ドル(約39万5,435円)の価格は年末にかけて3,000ドル(約43万9,373円)に達する可能性があると予測している。
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