
米国企業は熟練した外国人労働者の採用にあたり、毎年140億ドル(約2兆745億円)の追加コストを負担する見通しとなった。
ドナルド・トランプ米大統領は最近、H-1Bビザを通じて高度人材を雇用する企業に対し、1人当たり年間10万ドル(約1,482万円)の申請手数料を課す行政命令に署名した。この手数料は既存のビザ保持者には適用されず、来年2月の新規ビザ抽選後に申請する者が対象となる。
21日(現地時間)、フィナンシャル・タイムズによれば、米国移民局(USCIS)は昨年、新規H-1Bビザを14万1,000件以上発行したと報じた。今年も同規模となれば、米企業の追加負担は年間140億ドルに達すると見込まれる。
シリコンバレーは海外のエンジニアや科学者、プログラマーなどの採用にH-1Bビザへ大きく依存しており、このビザは会計事務所やヘルスケア企業など専門分野でも広く活用されている。USCISによれば、2023年のH-1Bビザ取得者の約3分の2はIT業界に従事する人材だった。昨年のH-1B承認件数は約40万件で、その大半は更新だったと説明している。
スタートアップ・インキュベーターであるY CombinatorのCEO(最高経営責任者)ギャリー・タン氏は、X(旧Twitter)上で「この決定はスタートアップの足かせとなる誤りであり、カナダのバンクーバーやトロントといった海外のテックハブへ莫大なプレゼントを与えるものだ」と批判した。さらに「我々はAI(人工知能)競争のただ中で、起業家に他国で事業を始めるよう促しているのと同じだ」と述べ、「米国の小規模テック企業が勝利すべきであり、10万ドルの通行税を課すべきではない」と付け加えた。
FTによれば、米大企業を代理する弁護士らは国務省の公式見解を待っており、一部企業は法的措置を検討しているという。国務省は現時点で公式声明を出していない。 ハーバート・スミス・フリーヒルズ・クレイマー(Herbert Smith Freehills Krame)法律事務所のパートナーであるマシュー・ダン氏は「行政府はH-1B制度の運営コストを回収する権限はあるが、10万ドルを追加で課すことは規制権限を逸脱している」と述べ、「裁判所がこの命令を阻止するために介入する可能性が非常に高い」と評価した。
トランプ大統領は現在、135件以上の訴訟に直面しており、今年初めに貿易相手国に課した相互関税の合法性について二つの下級審で敗訴した後、裁判所の判決を待っている状況だ。
今回の行政命令にはH-1B制度全体の改革方針も含まれている。ビザ承認基準となる給与水準の引き上げに加え、共和党議員は現行の抽選方式を給与順に基づく方式へ変更するよう求めている。
一部の雇用主は、管理職や特殊技能保有者向けのL-1ビザなど代替手段を検討しているが、最低1年以上の海外勤務経験が必要なため、要件が厳しいとされる。
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