
米国のドナルド・トランプ大統領が高度な技能を有する外国人技術者向け就労ビザ(H-1B)発給手数料を100倍の10万ドル(約1,482万9,512円)に引き上げ、米企業と外国人従業員が大混乱に陥っている。
専門職の外国人に提供されるH-1Bプログラムは、家族と共に居住・就労でき、永住権取得も可能なため、「アメリカン・ドリーム」を目指す工学系人材が主に求めるビザだったが、トランプ大統領が事実上その終焉を告げた形だ。
米国内でも批判が高まる中、ホワイトハウスは新規申請のみに適用すると発表したが、ビザの壁が極めて高くなったため、アメリカン・ドリームは幕を閉じたとの見方が広がっている。トランプ大統領は個人が100万ドル(約1億4,830万円)を納付すれば迅速に永住権ビザを処理する「ゴールドカード」プログラムも導入した。
トランプ大統領は19日(現地時間)、「専門職ビザ」と呼ばれるH-1Bビザの手数料を現行の1,000ドル(約14万8,285円)から10万ドルに引き上げる布告に署名し、21日から発効させた。H-1Bビザは科学・技術・工学・数学(STEM)分野の専門職向けで、抽選で年間8万5,000件のみ発行される。
基本的に3年間の滞在が許可され、延長可能で永住権申請も可能だ。特に南アフリカ出身のテスラのイーロン・マスクCEOがこのビザで渡米後に起業し市民権を取得するなど、グーグル、アマゾン、テスラをはじめとする米ビッグテク企業の急成長に最も貢献した制度と評価されている。
しかし、ビザ発給手数料が一気に100倍に跳ね上がり、個人負担や企業負担での人材確保が事実上不可能になった。「米国第一主義」を掲げるトランプ陣営の強硬派「MAGA(米国を再び偉大に)」の不満に応え、専門職ビザに「死刑宣告」が下されたといえる。
米国内では即座に激しい反発が起きた。マイクロソフトやアマゾン、JPモルガンなどは海外滞在中のH-1Bビザ保有者に直ちに米国へ戻るよう通知したと、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などが報じた。ただし、強い批判を意識したのか、行政命令の翌日にホワイトハウスは一部説明に乗り出した。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は20日、SNSの「X(旧Twitter)」で「年間手数料ではなく、(新規ビザ発行)申請時のみの一回限りの手数料だ」と述べ、「H-1B新規ビザにのみ適用され、ビザ更新時や現在のビザ保有者には適用されない」と釈明した。
一方、トランプ大統領は米国の新たな永住権ビザ「ゴールドカード」の行政命令にも署名し、90日以内に具体的な手続きを整えるよう米国務省などに指示した。個人が米国に100万ドルを納付するか、後援企業が200万ドル(約2億9,650万円)を支払えば迅速にビザを発給する内容だ。
また、米政府は30日からビザなしで米国入国が可能な「電子渡航認証システム(ESTA)」の手数料を、現行の約2倍となる21ドル(約3,113円)から40ドル(約5,930円)に引き上げることを決定した。
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