プーチン大統領、核軍縮条約終了後も1年間は「制限」維持を米国に提案
配備核弾頭と運搬手段を制限する新戦略兵器削減条約
来年2月に終了予定…中距離核戦力(INF)条約は2019年に失効

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は22日、米国との間で締結された核軍縮条約のうち最後に残された「新戦略兵器削減条約(ニュー・スタート)」が来年2月に失効を迎えるのを前に、失効後も1年間は条約の核兵器制限原則を順守する意向を示した。
2010年に当時のバラク・オバマ米大統領とドミトリー・メドベージェフ露大統領が署名したニュー・スタートは、配備核弾頭を上限1,550基、ICBMやSLBM、戦略爆撃機などの運搬手段を上限700基に制限する内容で、冷戦後の安全保障の柱とされてきた。しかし延長や新たな合意に向けた米露間の協議は途絶えており、失効後の核軍拡を懸念する声が高まっている。
プーチン大統領はこの日、ロシア国家安全保障会議の会合で「ニュー・スタートの失効は世界の安全保障に深刻な衝撃を与える」と指摘した。そのうえで「ロシアは失効後も1年間は制限原則を守る。米国も同様に遵守することを期待する」と述べた。
条約に定められた相互査察は2020年以降停止され、2023年2月にはロシアが「参加を一時停止する」と宣言した。米国とNATOがウクライナでの敗北を目指している中で米国査察団の受け入れはできないと説明した。ただし当時も「上限は順守する」と強調していた。これに対し米国のジョー・バイデン政権は「実質的な脱退だ」として、来年2月にニュー・スタートから完全に離脱すると表明している。
プーチン大統領が終了半年前のこの時期に、失効後も1年間の核兵器制限の維持を持ち出した背景には、核拡散への懸念よりも米国による一方的な核戦力増強を牽制する狙いがあるとの見方もある。プーチン大統領はウクライナ戦争を通じて、NATOが供与する長距離ミサイルの使用がロシア本土を脅かすたびに「ロシアが核大国であることを忘れるな」と警告を繰り返してきた。
一方、1982年の戦略兵器削減条約(START)締結から5年後の1987年に締結された中距離核戦力(INF)全廃条約は、射程500〜5,500キロの地上発射型ミサイルを廃棄するものであったが、ロシアによる違反が続いたことを理由に2019年に米国のドナルド・トランプ政権が脱退し、事実上失効している。
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