今月だけで6回侵犯…ロシア無人機・戦闘機がNATOの空を脅かす
プーチンの狙いは?

ロシアの無人機(ドローン)と戦闘機が最近、北大西洋条約機構(NATO)の領空を相次いで侵犯し、欧州の緊張が急激に高まっている。主要空港や軍事基地に大型ドローンが現れて航空機の運航が中断され、軍用機が飛行中にGPS(全地球測位システム)の信号妨害を受けるなど、NATOに対する空からの脅威が今月だけで最大6回発生した。ロシアがNATOの対応態勢を試しているとの見方や、欧州への戦争拡大を警告する声も出ている。
24日には、デンマークのオールボー空港やスクリュズストロプ空軍基地など少なくとも5か所の上空に未確認ドローンが出現し、一部施設が一時閉鎖された。22日にコペンハーゲンとオスロの空港でドローンが確認され、運航が中断されてからわずか2日後の出来事だ。24日午前には、スペイン国防相を乗せリトアニアに向かっていた軍用機が、ロシア本土から離れた飛び地カリーニングラード近くの上空でGPS妨害を受けた。スペインはリトアニア・シャウレイ基地に空軍部隊を派遣し、バルト海上空でのロシア軍用機活動に対応している。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が「ロシアの仕業の可能性を排除できない」と述べるなど、欧州各国は背後にロシアがいると疑っている。
ロシア軍機による領空侵犯も続く。10日未明にはロシアのドローン20機以上がポーランド東部上空に侵入し、ポーランドとNATOの戦闘機が3~4機を撃墜した。NATOが自らの領空内でロシア軍機を撃墜したのは1949年の創設以来初めてだ。13日にはロシアの攻撃ドローンがルーマニア領空に侵入し、同国のF-16戦闘機が迎撃に出動。19日にはMiG-31戦闘機3機がエストニア領空を約12分侵犯した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は24日の国連総会演説で「ロシアのドローンはすでに欧州全域を飛び回っている」と警告した。ポーランドやルーマニア、エストニアでの事例を挙げ「プーチン大統領は戦争を拡大し、続けようとしている。今や欧州で誰も安全を保証できない」と述べた。
NATOは北大西洋理事会(NAC)を開催し、「ロシアは無謀な領空侵犯を直ちに中止せよ」、「NATOはあらゆる軍事・非軍事手段を動員して抑止に当たる」とする強い声明を発表し、ストルテンベルグ事務総長も「意図的であれ偶発的であれ、ロシアの危険な行動の繰り返しは看過しない」と強調した。
対応をめぐっては加盟国の立場が分かれている。ポーランドのトゥスク首相やバルト三国は「再び領空が脅かされれば撃墜で応じる」と強硬姿勢を示す一方、ドイツやフィンランドは「即時撃墜はプーチン大統領の拡大戦略に乗ることになる」と慎重姿勢を見せる。トランプ米大統領も「撃墜すべきか」と問われ「そうだ」と答えつつ、米国が支援するかについては「状況次第」と即答を避けた。
ロシアは一切の責任を否認している。ドローンの航続距離は700キロに満たないためポーランド国境まで飛べない、軍用機は事前合意したルートを飛行しており侵犯していない、と主張し、デンマーク空港の運航中断についても「欧州との緊張を高める理由はない」と背後説を否定している。
西側の専門家の間では「ロシアはNATOの対応時間や交戦規則、指揮統制手順を探っている」との分析がある。電子戦用ドローンと低価格ドローンを組み合わせて防空網をかく乱し、反応パターンを収集している可能性が指摘されるほか、「欧州の関心をウクライナ支援から自国防衛に向けさせる低強度挑発だ」との見方も出ている。欧州メディアは「数千ドルのドローンに対して数千万ドルのF-35が出動している」と報じ、「欧州に巨額のコストを負わせることでNATO内部の不満や疲弊を積み重ねようとしている」と分析している。
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