米国から資金援助を受けながら中国に大豆輸出…アルゼンチンの「二股外交」に米農家が激怒
アルゼンチンの税免除措置で中国向け農産物輸出が急増
トランプ大統領の主要支持層、中西部の農家が反発

「我々(米国)はアルゼンチンに救済融資を提供したのに、彼らは我々が売るべき大豆を中国へ大量に輸出している」
9月24日、トランプ政権はアルゼンチンと通貨スワップ協定を締結し、200億ドル(約2兆9,800億円)の救済融資を提供することを決定した。これによりハビエル・ミレイ大統領は安堵の表情を見せた。
「チェーンソー男」を自称し、公共部門の大幅な構造改革による経済安定を掲げてきたミレイ大統領は「南米のトランプ」とも呼ばれ、ドナルド・トランプ大統領への親近感を公然と示してきた人物だ。ミレイ大統領はトランプ大統領と同じく「MAGA(Make Argentina Great Again=アルゼンチンを再び偉大に)」をスローガンに掲げ、2023年12月に就任した。
両者の個人的な親密関係も後押しし、今回200億ドル(約2兆9,800億円)規模の通貨スワップが成立した。
しかしアルゼンチンが、大豆に対する輸出税を一時的に免除し、米国産大豆の最大市場である中国への輸出を急増させると、トランプ大統領の支持層である米国の農家が反発した。
トランプ大統領は8月、自身のSNSで「中国は米国産大豆の注文を4倍に増やすべきだ」と強く要求し、さらにスコット・ベッセント財務長官はノースダコタ州に数千エーカー規模の大豆農場を所有していることでも知られる。
特に今月、中国によるアルゼンチン産大豆の輸入は7年ぶりの高水準に達した。中国の輸入業者が、輸出税免除の短い期間に数百万トン規模の主要作物を一気に購入したためである。
国連総会の最中、ベッセント財務長官がアルゼンチン産大豆の対中輸出急増に憤るメッセージを携帯電話で読んでいる様子がメディアに捉えられ、注目を集めた。
米国はアルゼンチンとの通貨スワップ締結にあたり、中国との180億ドル(約2兆8,000億円)規模のスワップ中止を要求し、また大豆・トウモロコシ・小麦への輸出税免除を撤回するよう求め、アルゼンチンの措置は9月22日から24日までのわずか3日間で終了した。
しかし、その短期間に課税率26%の大豆輸出税が免除された結果、中国からの注文が殺到し、アルゼンチンは約70億ドル(約9,450億円)の売上を確保した。
こうした中国の「買い占め」により、シカゴ商品取引所の大豆先物価格は2週連続で下落した。米国農家からは「政府補助金だけでは中国向け輸出の減少を補えない」との不満が噴出している。
来年の中間選挙を前に、基盤支持層である農家の怒りはトランプ政権に大きな痛手となりつつある。トランプ大統領はまた、日本や韓国に「前払い」で要求した投資資金も農家の利益に充てると公言している。
昨年、中国は1億500万トンの大豆を輸入し、そのうち約20%が米国産だった。しかし今年に入り、トランプ大統領の再登場とともに、中国は調達先をブラジルやアルゼンチンなど南米諸国へ大きくシフトさせている。
コメント0