
日本経済新聞(日経)は10日、ノーベル生理学・医学賞受賞者である大阪大学の坂口志文特任教授が設立したバイオスタートアップRegCellが、2026年に米国で初の臨床試験を開始すると報じた。
カリフォルニア州に本社を置く同社は、坂口教授が発見した「制御性T細胞」を活用した自己免疫疾患治療薬の開発を目指すと発表。
RegCellは、まず患者を対象に安全性と有効性を確認する第1相臨床試験を開始する予定であり、その後問題がなければ有効性検証のための第2相、大規模な第3相試験へと段階的に拡大する計画だ。
一般的に、臨床試験開始から規制当局の承認を受けるまでには5~8年を要するため、実際の商用化は2030年以降になると見込まれている。
坂口教授が発見した制御性T細胞は、過剰な免疫反応を抑制する重要な役割を担っている。免疫系が正常な細胞を攻撃して発生する1型糖尿病や関節リウマチなどの治療において、画期的な転換点をもたらすと期待されている。
治療薬は、患者自身の免疫細胞を採取し、特殊な培養方法で人工の制御性T細胞に変換した後に再び投与する方式。体内に存在する制御性T細胞は量が少なく、治療への利用が制限されていたが、体外で大量生産して補充することで十分な治療効果が得られるというのが核心原理だ。
特に、制御性T細胞を特定の抗原にのみ反応するよう改良すれば、治療効果をさらに高めることができる。会社関係者は「遺伝子編集など複雑な遺伝子操作を行わずともコスト削減が可能なのが強み」と説明した。
自己免疫疾患治療に注目されている制御性T細胞調節技術が、癌治療分野でも新たな可能性を示している。日経によれば、制御性T細胞が持つ免疫反応を抑制する機能を逆に活用すれば、癌細胞に対する免疫反応を活性化できると分析されているという。
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