「美」と「権力」の融合――トランプ大統領「MAGAワールド」を彩る元ミスたち

ドナルド・トランプ米大統領の政権と、彼を支持する保守層「MAGA(Make America Great Again/米国を再び偉大に)」には、美人コンテスト出身者が目立つ。イメージ戦略を重視するMAGAの政治的スタイルと、伝統的価値観を象徴する美人コンテストの世界が重なった結果だと分析されている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10日(現地時間)、「MAGAの世界には美人コンテスト出身者がずらりと並ぶ」と報じ、「これは偶然ではない」と指摘した。トランプ第2期政権では、複数の美人コンテスト出身者が要職に就いている。国土安全保障長官クリスティ・ノーム氏は、1990年の「ミス・サウスダコタ・スノー・クイーン」出身である。ジェームズ・コミー前FBI長官に対する刑事告発を担当したリンジー・ハリガン連邦検事(バージニア州東部)は「ミス・コロラド」準決勝進出者で、ホワイトハウス副報道官アナ・ケリー氏もバージニア州の美人コンテスト出身である。政権幹部ではないが、MAGAの若手活動家で先日暗殺されたチャーリー・カーク氏の妻エリカ・カーク氏も、2012年の「ミス・アリゾナUSA」出身だ。彼女は夫の葬儀で伝統的な女性像を称えるスピーチを行った。
MAGAと美人コンテストの親和性が象徴的に表れたのは、ミス・サウスダコタ出身の共和党州上院議員アンバー・ハース氏の発言だった。昨年11月、ミス・ユニバースでデンマークのモデル、ビクトリア・キアー・タイルビグ氏が優勝すると、彼女はSNSに「トランプは大統領、ミス・ユニバースは金髪。私たちはあの頃に戻った」と投稿した。トランプ大統領の代名詞でもある金髪は、長年「白人の美的理想」を象徴してきた。ハース氏の発言は、ポップカルチャーの美的基準が再び伝統的な西欧的価値観へと回帰していることを示唆しているとされる。また、ミス・アメリカのエイビー・ストッカードは、今年1月のトランプ就任式に「Make America Healthy Again(アメリカを再び健康に)」と書かれた緑のドレスで出席し話題を集めた。
保守系女性誌「Evie Magazine(エヴィ・マガジン)」編集者のブリトニー・ヒューゴブーム氏は、MAGAと美人コンテスト出身者の結びつきを「時代の転換」と捉える。「私たちはヒラリー・クリントン氏のパンツスーツ時代を抜け出し、女性性を称える時代へと移行している」と語り、「現政権は美の力を政治にどう生かすかを理解している」と分析した。同誌の最新号では「ミス・アメリカを再び偉大に──保守文化は100年の伝統を持つ美人コンテストを救えるか?」という見出しが掲載されている。支持者たちは、美人コンテストは単なる「外見の競争」ではなく、若い女性が規律・冷静さ・思考力を鍛える場だと主張する。
一方で批判的な見方も根強い。オハイオ州マイアミ大学の女性史学者キンバリー・ハムリン氏は、「美人コンテストの成功ルールはトランプ・ワールドと同じだ」と指摘し、「常に最高の見た目で、いつでもビキニ審査に臨める準備を整え、男性上司の望むように振る舞う」と批判する。作家マーゴ・ミフリン氏も「MAGA文化と美人コンテストは、いずれも現状維持を望み、因習的で伝統的な女性像を理想としている」と述べた。
MAGA内部でもこうした問題意識は存在する。ハース議員は「美人コンテストが自身の成功につながったのは確かだが、奨学金を得るために若い女性が下着姿で評価される仕組みは理想的ではない」と語った。
トランプ大統領自身も、美人コンテストと深い関わりを持つ。彼はかつて「ミスUSA」、「ミス・ティーンUSA」、「ミス・ユニバース」などを運営する団体を買収し、美の帝王として君臨した。2015年に主催権を売却するまで、彼はこの業界の象徴的存在であり続けた。
一方で、主催者時代には出場者の更衣室に無断で立ち入ったとして物議を醸したこともある。トランプ大統領は当時、「オーナーとして確認(inspecting)する権利があった」と主張していた。
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