
欧州連合(EU)がロシアと接する東欧諸国の東部国境地帯にロシアのドローン(無人機)挑発を防ぐ「ドローン防壁(Drone Wall)」を設置すると発表し、論争が激化している。
数千キロに及ぶロシア国境地域にドローン防壁を設置するには莫大な予算が必要とされ、ドイツと南欧諸国を中心に反対の声が高まっている。専門家らは、予算合意なしにEUが無計画にドローン防壁設置を強行すれば、加盟国の反感が高まり、逆に共同軍事対応が困難になると警告している。
EU内ではドローン防壁設置計画を巡る議論が続いている。ユーロニュースによると、9日、フランス・ストラスブールで開かれた欧州議会で、ドイツ、スペイン、イタリア、ギリシャなどがドローン防壁設置計画に反対意見を表明した。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相もドローン防壁計画について「非現実的で財政的に無責任な発想だ」と公然と批判した。
一方、EUは欧州防衛のためにドローン防壁計画の実行が不可欠だとの立場だ。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は欧州議会の演説で「ドローン防壁は東欧諸国だけでなくEU全体の盾になり、ロシアの挑発への対抗だけでなく、自然災害対応、テロ犯罪との戦いを含む様々な課題にも対処できる」と強調した。
論争の的になっているドローン防壁は、ロシアのドローン挑発を防ぐため、ロシアと国境を接する北大西洋条約機構(NATO)東欧諸国の国境地帯にドローン対応防衛システムを構築する計画だ。ドローン監視システムと各種電子戦装備を新たに整備し、各国の迎撃ミサイルシステムを統合して、ロシアのドローン挑発に即座に対応・反撃できる体制を整えることが主な目的だ。
問題はドローン防壁の建設に膨大な予算がかかる点だ。CNNによると、NATO東欧諸国とロシアとの国境地帯は2,600kmに及ぶという。欧州を南北に貫くこの広大な地域にドローン防壁を設置するには、最低10億ユーロ(約1,764億331万円)の資金が必要で、3年以上の期間を要すると予想されている。
東欧EU加盟国の中で親ロ国の一部がドローン防壁設置プロジェクトから完全に除外されていることも懸念材料だ。先月の26日、EUでドローン防壁構築のための高官級ビデオ会議が開かれた際、スロバキアとハンガリーは親ロ国という理由で招待されなかった。防壁設置計画に関する機密情報がロシア側に漏洩する可能性を懸念してのことだ。
ドローン防壁建設を巡るEU内の対立が激化する中、2015年に推進されたウクライナの「欧州の壁」計画のように立ち消えになるのではないかという懸念も出ている。ウクライナ政府とEUは2014年のロシアによるクリミア半島強制併合後、ウクライナ東部地域に大規模な鉄条網を設置すると発表したが、ウクライナ戦争勃発時まで予算問題などの理由で完成しなかった。その後、当該地域がウクライナ戦争でロシアに占領され、計画自体が頓挫した経緯がある。
オーストリアの軍事専門家、マルクス・ライスナー大佐は「欧州の壁計画は、まずドローンのジャミング(妨害電波)と低コストの無人機対応システムを開発してコストを大幅に削減しない限り、欧州経済に不利な状況を生むだろう」と指摘した。また、「各国のミサイル防衛システムを統合しても、ドローンより数千倍高価な迎撃ミサイルでドローンを撃墜し続けることは不可能だ」と述べた。
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