ベセント財務長官「7つの戦略産業で政府出資拡大など統制を強化」
「市場より安全保障」…米国、中国の希土類支配に対抗し「経済安保の全面戦」へ

米政府が中国の新たな経済措置に対抗するため、国家安全保障の中核を担う産業分野で自国企業への統制を大幅に強化する方針を打ち出した。
スコット・ベセント財務長官は15日(現地時間)、「トランプ政権が戦略的重要性の高い7つの産業を指定し、政府の直接統制を拡大する案を検討中だ」と明らかにした。
ベセント長官は同日、CNBC主催の投資フォーラムで「中国によるレアアース支配に対応するには、より積極的な産業政策が必要だ」と述べ、「政府は特定戦略産業への持ち株を増やし、国家レベルでの介入を強める計画だ」と説明した。
この方針は、自由市場と開放投資を重視してきた米国の経済路線から大きく転換する動きとなる。
米メディアは、トランプ政権が「中国型産業政策」を部分的に導入し、国家安保と直結する主要企業に政府が直接関与することで、生産や技術への統制力を確保しようとしていると分析している。
目的は、中国への依存度を下げ、中国が貿易交渉で技術や資源供給を交渉カードとして利用する事態を防ぐことにある。
防衛・半導体・レアアースなど7産業を指定
検討対象とされるのは、防衛、半導体、レアアース、航空機、先端兵器、バッテリー、基幹素材産業など7分野である。
ベセント長官は「特に防衛分野では政府が主要な顧客であるため、企業が配当や自社株買いではなく研究開発により多くの資金を投じるよう求めることができる」と述べ、「現状では防衛企業の納品遅延が深刻な水準にある」と指摘した。
トランプ政権はすでにUSスチール、インテル、トリロジー・メタルズ、レアアース採掘会社MPマテリアルズなどに出資を行っており、NVIDIAやAMDの中国市場での売上に対しても一定割合の利益配分を求めたとされる。

中国の「輸出許可制」発表に即時反応
一方、中国政府は最近、中国産のレアアースや中国技術で加工された製品を取引する際に新たな「輸出許可制」を導入すると発表した。
この措置は自動車から半導体まで幅広い産業に影響を及ぼすとみられ、西側諸国やグローバル企業に衝撃を与えている。
トランプ大統領はこれを受けて「11月1日から中国産製品に100%の追加関税を課す」と警告し、予定されていた習近平国家主席との首脳会談の中止を表明した。
ただし、発表直後にニューヨーク株式市場が急落したため、「すべてうまくいくだろう」と発言をややトーンダウンさせている。
ベセント長官は「中国のレアアース統制は、米国が国内サプライチェーンの自立を急ぐ必要性を示している」と述べ、「自給体制の構築と同盟国との供給網協力を強化していく」と強調した。
米、対中報復を警告 「経済的強圧」と非難
米財務省と通商代表部(USTR)は、中国の新制度を「世界を対象とした経済的強圧だ」と非難した。
米国は、中国の措置が年初に結んだ貿易休戦合意に違反するとして、実際に許可制が実施されれば即時に報復関税を発動する方針だ。
最近では米中対立が造船・物流分野にも拡大しており、米国は中国製船舶への港湾入港料を新設した。これに対抗して中国政府は韓国のハンファグループの米国造船関連子会社5社を制裁対象とし、自国企業に取引停止を命じた。
ベセント長官の発言は、ワシントンで開かれている国際通貨基金(IMF)・世界銀行(WB)年次総会期間と重なり、各国の注目を集めている。
同氏は「これまでは同盟国にも関税をちらつかせてきたが、今こそ共に中国の不公正な行為に立ち向かう時だ」と述べ、欧米・アジア諸国との連携強化に意欲を示した。
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