フォードCEO「EV需要は半減する」
トランプ大統領、EV税額控除を廃止
テスラ、シェア拡大の可能性あるも市場縮小は逆風

トランプ政権の政策転換により、米国の自動車メーカーが電気自動車(EV)事業から相次いで撤退している。
連邦政府による7,500ドル(約110万円)のEV税額控除制度が廃止され、需要見通しが一気に不透明となるなか、投資家の関心は来週の決算発表を控えたテスラに集まっている。
GM・フォード・ステランティス、相次ぐ悲観的見通し
ゼネラル・モーターズ(GM)は14日(現地時間)、電気自動車(EV)関連の投資損失16億ドル(約2,400億円)を引当金として第3四半期決算に計上すると発表した。
これは、大手自動車メーカー各社が相次いで示している「EV事業の失速」を裏付ける動きといえる。
フォードのジム・ファーリーCEOは先月、「連邦税額控除の終了により、完全EVの需要は半減するだろう」と予測した。
また、ステランティスは欧州で掲げていた「2030年までの100%EV化」の目標を正式に撤回し、米国内におけるクライスラー・ブランドの電動化計画も大幅に縮小した。
トランプ政策、EV市場の「最大の不確定要素」に
トランプ大統領は7月4日に署名した「One Big Beautiful Bill Act(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法)」によって、EV税額控除制度の廃止を正式に決定した。
新車・中古車いずれも最大7,500ドル(約110万円)の優遇措置は9月30日で終了した。
これにより購入インセンティブが消え、米国内のEV需要減速と投資縮小を招いている。
エネルギー・気候政策シンクタンク「エナジー・イノベーション」のロビー・オービス政策局長はCNBCの取材に対し、「損失の原因は単なる税制優遇の終了ではなく、トランプ政権による広範なEV関連規制の変更にある」と指摘し、「カリフォルニア州の排ガス基準の自主権撤廃、充電インフラ補助金の削減、工場転換予算の縮小など、産業基盤を揺るがす政策が次々と打ち出されている」と語った。
オービス氏は「こうした政策と関税強化の影響で、自動車業界はすでに数十億ドル規模の損失を被り、新規投資の余力も著しく低下している」と付け加えた。
テスラ、試練か好機か
こうした状況の中、注目はテスラに集まっている。
テスラは依然として米国内最大のEVメーカーだが、競争の激化やブランド価値の低下により、市場シェアは昨年末の49%から今年9月末には43.1%にまで落ち込んだ。
来週発表予定の第3四半期決算では、税制優遇措置廃止後の消費動向が焦点となる。テスラは最近、モデルYとモデル3の低価格版を投入し、税控除廃止による実質価格上昇の影響を一部吸収している。
投資会社オートモーティブ・ベンチャーズのスティーブ・グリーンフィールド氏は、「GMやフォードなど従来型メーカーの撤退は、テスラにとってチャンスになり得る」と分析。「テスラは依然として強固なブランド忠誠度を保っている」と述べた。
一方で、同氏は「第4四半期には需要が急減する可能性が高い」とも指摘。「税控除終了前に駆け込み購入があったため、需要が先食いされた」との見方を示している。
LSEGの推計によると、テスラの第3四半期売上高は前年同期比で3.5%増の261億ドル(約4兆円)となった。しかし、第4四半期以降は売上の鈍化が見込まれ、2025年通年では3.5%の減少が予測されている。年間ベースでの減収はテスラにとって初めてのケースとなる。
マスクCEO氏、「次の柱」に注力
テスラは今月初め、四半期の納車台数が前年同期比7%増と発表し、上半期2四半期連続減から一転、増加に転じた。
ただし専門家の間では「他社撤退=テスラ独占」にはならないとの見方が強い。
市場全体の需要が停滞しているためである。低価格版モデルY・3も「革新というより短期的な防衛策」との評価が多い。
一方、イーロン・マスクCEOは投資家の関心を「ロボタクシー」とヒューマノイドロボット「オプティマス」にシフトさせている。
一部都市で試験運行を開始したが、グーグル親会社アルファベットの「ウェイモ」に比べ、商用化では遅れを取っている。
マスクCEOは3月に「オプティマスを年内に5,000台生産する」と述べたが、主力人材の離脱により目標達成は不透明のままである。
9月にはX(旧Twitter)で「テスラの価値の80%はオプティマスが生み出す」と発言しており、昨年には「オプティマスがテスラを25兆ドル(約3700兆円)企業に押し上げる」と豪語していた。
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