
ロシアの脅威に備え再軍備に乗り出したドイツでは、「選択的徴兵制」導入を巡る対立が一層深まっている。与党・ドイツキリスト教民主同盟(CDU)が義務的な兵役を強調する一方、連立政権の社会民主党(SPD)は自発的な兵役を重視している。14日(現地時間)に予定されていた「選択的徴兵制」法案発表の記者会見は、直前に中止されたため、16日に同法案が予定通り連邦議会で審議されるかどうかは不透明になっている。
ドイツは、アンゲラ・メルケル前首相政権下の2011年に徴兵制を事実上廃止した。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けた安全保障上の懸念の高まりを背景に、今年5月に就任したドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「強いドイツ軍を作る」と宣言し、現在の18万人の兵力を26万人に増強する方針を打ち出した。
15日、英BBCは、ドイツで義務兵役制再導入の計画が連立政権内の対立により最終段階で混乱に陥ったと報じた。当初、両党が発表を予定していた「選択的徴兵制」の合意案は、自発的徴集と無作為抽選を組み合わせた方式だった。第1段階として、18歳になった男性は、軍当局から入隊通知書に類似した調査票を受け取り、兵役の意向や体力、健康状態について必ず回答しなければならない。
この回答をもとに、ドイツ連邦軍が十分な志願者を集められない場合、第2段階として義務徴集に移行する。無作為抽選で不足する兵力を補充する方式で、現在デンマークで実施中のモデルに類似している。なお、デンマークは男女両方を対象としているが、ドイツでは男性に限定されている。

対立の火種になったのは、第2段階の無作為抽選制である。SPD所属のボリス・ピストリウス国防相は、強制徴集に反対している。実際、ピストリウス国防相が今夏提出した草案には「兵役の決定は、自発的でなければならない」との趣旨が盛り込まれていた。
しかしCDUは規定が曖昧だとして、兵力が当初目標に達しない場合、義務徴集条項を追加することにした。14年前に徴兵制は廃止されたが、基本法(憲法)には「国家が18歳以上の男性を強制徴集できる」という条項が明記されているためである。
また、ドイツはロシアと国境を接しているものの、他の軍事大国とは異なり独自の核兵器を保有していない。そのため、兵力の迅速な増強が急務とされている。さらに、ドイツ連邦情報局(BND)のマルティン・イェーガー長官は最近、議会で「ロシアが2029年前に、北大西洋条約機構(NATO)に侵攻する可能性がある」と警告した。
両党が意見の隔たりを埋められない場合、「選択的徴兵制」導入を巡る議論はしばらく停滞する可能性がある。ピストリウス国防相は15日、「無作為抽選による強制徴集は安易な妥協だ」と述べ、また「抽選制よりも軍人の給与引き上げや研修機会の拡大などのインセンティブによって志願者を多く集める方が、より効果的だ」と反論した。
徴兵制再導入を巡っては、世代間の対立の兆しも見えている。ドイツの世論調査機関「フォルサ」が実施した調査によれば、ドイツ国民の54%が徴兵制復活に賛成している一方で、徴兵対象となる18~29歳では反対意見が63%に上っているという。
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