兵器向け性能のバッテリーが輸出規制対象へ
全固体電池の研究進展で「中国の供給網支配が強化」

中国が最近、希土類(レアアース)と並んでリチウムイオン電池関連製品の輸出統制を強化したのは、軍用を中心とする高性能バッテリー分野での優位を確固たるものにする狙いがあると、16日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が報じた。
中国政府は今月9日、6つの文書で希土類および電池関連の輸出規制を発表し、来月8日からは高性能リチウムイオン電池の完成品や正極材・黒鉛負極材、電池製造機器などを新たに統制対象に加えると決定した。
対象となるのは、エネルギー密度が1キログラムあたり300ワット時(Wh/kg)以上の高性能リチウムイオン電池とその製造装置、関連技術、電池用負極材の主要原料である黒鉛やリン酸鉄リチウムなどの正極材原料の一部、さらにそれらを製造する設備や技術などとされる。
これらの品目を輸出する場合は、二重用途(民生・軍事併用)物資の輸出規制に基づき、中国政府の許可を得る必要がある。
業界関係者の間では、今回の輸出規制が極めて高いエネルギー密度を持つ電池に限定されることから、短期的な影響は限定的との見方もある。
しかし、SCMPは「この措置は中国が電池産業における優位をさらに強化し、特に軍用高性能電池の戦略的重要性が高まるなかでの動きだ」と分析している。
一般的に電気自動車用のバッテリーは航続距離やコスト効率を重視するが、軍用電池では高エネルギー密度、軽量化、極限環境での安全性や安定性が重視される。
SCMPは「今回の輸出統制は、まさにそうした特性を持つ高品質な電池が対象となっている」と指摘した。
SCMPはまた、高性能バッテリーが電気自動車やヒューマノイドロボットを超え、軍事装備の主要動力源になったとし、電動戦車、ドローン、無人潜水艦など新たな兵器の多くが、こうした固体電池の潜在的な用途だと解説した。
実際、中国は先月の抗日戦争勝利80周年の記念軍事パレードで、最高時速85kmで走行可能なハイブリッド電動技術を搭載した新型戦車を披露した。

また、中国船舶集団有限公司(CSSC)が昨年マレーシアの防衛産業博覧会で展示した電動無人潜水艦は、電動エンジンで最大速度12ノット、最大潜水深度300メートル、航続距離約926キロに達するという。
SCMPは、中国がこうした強気の電池輸出統制に踏み切れた背景には「夢の電池」と称される全固体電池の分野での技術的進展があると伝えた。
全固体電池は液体電解質の代わりに固体電解質を使用し、熱や圧力に強く、火災や爆発のリスクが低いことから、次世代電池として注目を集めている。
ただし、イオン伝導度の低さや電極界面での高抵抗による性能低下など、量産化に向けた課題も残されている。
最近では中国の研究チームがこれらの問題を克服し量産を可能にする研究結果を相次いで発表した。
清華大学の研究チームは、界面安定性を大幅に向上させた新しい高分子電解質を開発し、エネルギー密度を600Wh/kgまで高めたうえで、釘刺し試験や摂氏120度で6時間の耐熱試験も通過したと発表した。
また、中国科学院物理研究所の研究チームは、界面抵抗を低減させるためヨウ化物イオンを利用し、自己修復が可能な「動的適応界面」技術を開発した。これにより、エネルギー密度500Wh/kgを超えるバッテリーを3年から5年以内に量産化できる可能性があると主張している。
SCMPは「中国が現在、世界のバッテリー素材の70%以上、完成電池の60%以上を供給している」とし、「これらの技術的進歩は、グローバルなバッテリー供給網における中国の影響力を一段と強化するものだ」と評価した。
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