
景気後退への懸念が高まる中、ウォール街の投資家たちは再び防衛資産に目を向けている。公益事業、ヘルスケア、生活必需品、金、債券など景気変動の影響を受けにくい資産が最近、市場の主導権を握る動きを見せている。
直近1か月の収益率を見ると、景気敏感株が低迷する一方で、防衛関連株が明らかに優位に立っている。Invesco KBW Regional Banking ETF、原油、SPDR・S&PホームビルダーズETFがマイナス収益率を記録したのに対し、S&P500のヘルスケア・公益事業セクターと金はプラス収益率を示した。専門家らは、この動きが2022年6月以来初めて、防衛関連株がS&P500の上昇を牽引する可能性を高めていると分析している。
19日(現地時間)のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、8月以降で最も不安定な相場の中、投資家らは景気敏感株から資金を引き揚げ、公益事業、ヘルスケア、生活必需品セクターへとシフトしているという。電力・医薬品・食品など必需品産業は、景気動向に関係なく安定した需要が見込め、着実な利益を上げられる点が強みだ。
債券市場でも「リスク回避」の流れが顕著だ。10年物米国債利回りは過去3か月で約0.5%ポイント低下し、1年ぶりに4%を下回って取引を終えた。金価格も連日史上最高値を更新し、代表的な安全資産としての地位を再確認した。
バーンスタイン・プライベート・ウェルス・マネジメント(Bernstein Private Wealth Management)の最高投資責任者、Alex Chaloff氏は「過去6か月間、市場は上昇を続ける一方でニュースは悪化するという乖離した状況が続いている」と指摘した。また「投資家がより防衛的なポジションに移行するのは自然な流れだ」と述べた。
一方、景気敏感株は打撃を受けている。地方銀行、小売業者、住宅建設会社、航空会社の株価が最近1か月間で軒並み急落した。自動車部品メーカーのファースト・ブランズ・グループと自動車ローン会社トライカラーの破産は市場に衝撃を与えた。
大手銀行も連鎖的な損失を被っている。JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOは「ゴキブリを1匹見つければ、おそらくもっといるだろう」と述べ、追加の不良債権発生の可能性を警告した。
ジェフェリーズ・ファイナンシャル・グループ、KKR、アポロ・グローバル・マネジメントなど主要投資機関も売りに加わった。信用収縮の波は地方銀行にも及んでいる。ザイオンズ・バンコーポレーションとウェスタン・アライアンスは貸倒引当金の積み増しと訴訟を相次いで発表し、KBW地方銀行株指数は急落した。
市場の不安にもかかわらず、企業の基礎体力は比較的堅調だ。アナリストらは今後1年間でS&P500企業の利益成長率が16%に達すると予測している。これは2021年のパンデミック以降最高水準だ。利下げ期待も株価上昇を後押ししている。
フィデリティ・インベストメンツのグローバル・マクロ部門ディレクター、ジュリアン・ティマー氏は「一部の分野が過度に拡大しているのは事実だが、基礎体力は依然として強い」と分析した。しかし、ハイイールド債のスプレッドが今年6月以来の最高水準に急上昇し、実体経済の指標が弱含む中、市場は「不安を抱えながらの強気相場」を続けている状況だ。
アンリミテッド・ファンズのボブ・エリオットCEOは「大手テクノロジー株の上昇が実体経済全体の弱さを覆い隠していた」と指摘した。また「ここ数週間で弱気の兆候が価格に反映され始めている」と分析した。
最近の景気減速の兆候は労働市場にも表れている。低所得層の家計はすでに支出を抑制しており、これは消費関連業種の業績に反映されている。一方、AI関連のインフラ投資は経済成長を下支えしている。政府の最新の国内総生産(GDP)報告書によると、AI関連支出は成長に寄与したものの、消費支出は停滞していると、WSJは伝えている。
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