
ロシアが数十年前に北極海に沈没した旧ソ連時代の原子力潜水艦2隻を引き揚げる計画を進めていることが分かった。英紙『テレグラフ』など複数の海外メディアは21日(現地時間)、北極海に沈む旧ソ連の核潜水艦「K-27」と「K-159」を引き揚げるための予算案が編成され、来年から本格的な作業に入ると報じた。
1963年に就役した「K-27」は、鉛・ビスマス液体金属冷却炉を搭載した実験用原子力潜水艦である。1968年に深刻な原子炉事故が発生し、乗組員140人以上が放射線に被曝、うち9人が死亡した。その後も度重なる事故を経て1979年に退役し、ロシア海軍は原子炉区画をタールで密閉した上で、1982年に北極海カラ海の海底に意図的に沈めた。現在、K-27は水深約75メートルの浅い海域にあり、潮流や海流により船体が損壊する危険が高まっているという。
同じく1963年に就役したK-159は、ノヴェンバー級の原子力潜水艦で、20年以上にわたりソ連北方艦隊に所属していた。しかし、放射線漏れにより艦全体が汚染されるなどの問題を抱え、1989年に退役した。2003年、解体のため曳航されていた際にキルディン島沖で事故を起こして沈没し、現在は水深約250メートルの海底に眠っている。

ロシア国営原子力企業ロスアトムによると、2026年度のロシア連邦予算案に沈没した2隻の引き揚げ費用が予算が盛り込まれており、実際の作業は2027年から開始される見通しだという。放射性廃棄物の安全な処理および危険施設の解体を目的とするこのプロジェクトの予算は、2026年に105億ルーブル(約195億6,866万5,000円)、2027年に107億ルーブル(約199億4,140万2,000円)、2028年に106億ルーブル(約197億5,503万4,000円)とされている。
沈没した潜水艦の引き揚げ計画は2012年から議論されてきたが、これまで予算不足や専門機材・人材の欠如などを理由に実現しなかった。
しかし今回、ロシアが改めて引き揚げに踏み切る背景には、北極海での支配力強化を狙う思惑があるとみられる。旧ソ連時代の核の遺産が北極海の環境汚染の象徴として、米国や中国、周辺国から批判の的となることを警戒しているためだという。
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