
米国のドナルド・トランプ大統領が今年、全世界を対象に仕掛けた関税戦争において、最も大きな打撃を与えた相手は中国とブラジルである。しかし、ブラジルと中国が共同戦線を張ることで、米国は後退する形勢が見られている。
米中首脳は、今月30日に韓国・釜山で開催される首脳会談において、中国の米国産大豆輸入について議論する見込みだ。米国メディアによれば、大豆の収穫期である9月、中国が2018年以来7年ぶりに米国産大豆の輸入契約を一件も結ばなかったことが明らかになり、米国の農家はパニックに陥ったという。
戦略国際問題研究所(CSIS)の経済プログラム責任者フィリップ・ラック氏は「中国は有利な立場にある。我々(米国)はこの問題を解決せねばならないが、彼ら(中国)にはその必要がない」と述べ、「仮に首脳会談の翌日に契約が結ばれたとしても、米国の農家はシーズンの半分を失うことになるだろう」とワシントン・ポスト(WP)に語った。
トランプ政権1期目(2018~2019年)における米国産大豆の輸入中断は、米国の関税賦課に対する中国の報復手段であったが、同時に「両刃の剣」にもなった。豚の飼料として使用される大豆価格が上昇すれば、中国の食卓に大きな割合を占める豚肉価格も押し上げられ、民生不安の要因になりかねない。しかし、数年来進められてきたブラジルへの農業投資が、リスクを緩和する役割を果たしている。
中国は、2009年にブラジルと自由貿易協定(FTA)を締結して以来、ブラジルにとって最大の貿易相手国になった。2016年以降、中国の大豆輸入においては、ブラジル産が米国産を上回る比率になった。中国は2018年にブラジルから2億7,100万ドル(約412億3,944万円)相当、米国からは3,100万ドル(約47億1,743万円)相当の大豆を購入した。
昨年、中国のブラジル産大豆輸入額は3億1,500万ドル(約479億3,515万円)相当に対し、米国産は1億2,600万ドル(約191億7,287万円)相当にとどまった。中国における米国産大豆の輸入比率は、2016年の39.4%から昨年は21.07%に低下した。一方、米国産大豆の52%は依然として中国向けである。
中国とブラジルの協力は、農産物の大量購入にとどまらない。ロイター通信によると、中国国営農業企業の中糧集団有限公司(COFCO)は2014年からブラジルに対して23億ドル(約3,499億8,090万円)以上を投資しているという。この投資には、年間1,400万トンの穀物を処理可能なサントス港の新ターミナル工事も含まれている。中国は、ブラジルに対してスターリンクに代わる、アマゾンの違法伐採監視技術を提供し、ブラジルとペルーを結ぶ物流高速鉄道の建設も推進している。
ブラジルにとっても、中国は大きな支えになった。トランプ大統領は、クーデター未遂の疑いで裁判を受けている親トランプ派のジャイール・ボルソナーロ前ブラジル大統領の釈放を要求し、7月、ブラジルに50%の関税を課した。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領はすぐには動かなかった。
米国の実務家向け外交専門誌「The Diplomat」は「ブラジルに対する米国の関税は大きな打撃にはならず、むしろ中国との関係強化のきっかけになった」とし、「中国との関係が、ブラジルと(米国との交渉を追求する)メキシコの異なる関税対応を生み出した」と指摘した。ブラジルは対米貿易赤字国であり、対米輸出依存度は昨年時点で12%程度である。一方、メキシコの対米輸出依存度は80%に達する。中国は、トランプ大統領の発表直後にコーヒー豆の輸入拡大を約束し、ブラジルを支援した。
結果的に、ブラジルに対してもトランプ大統領が先に手を差し伸べた。ルーラ大統領は26日、ブラジル政府が米国と早急に関税紛争を解決するための交渉に入ることをソーシャル・メディアで明らかにした。
中国とブラジルは、今後11月にブラジルのベレンで開催される「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」において、米国に対して道徳面および経済面の双方から圧力をかける見通しである。環境団体などによれば、ブラジルは今回のCOPでグローバル炭素市場の統合と再編を主導する計画であるという。中国の習近平国家主席は、先月の国連総会オンライン演説で炭素排出削減を約束した。トランプ大統領は「気候変動は詐欺だ」と主張し、気候危機を否定してきた。
















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