バイデン恩赦の無効化を狙うトランプ 法の壁を越えられるか
「バイデン前大統領、自筆でなくオートペン署名」疑惑
司法省、恩赦が「本人の意思によるもの」か調査中
法曹界「憲法上、恩赦権の取り消し手段は存在せず」
ドナルド・トランプ米大統領は就任後、前任のジョー・バイデン政権が行った政策を次々と覆そうとしている。バイデン前大統領が任期中に実施した特別恩赦もその一つだ。ただし、米国憲法上、大統領による恩赦権の行使を取り消す手段は存在しないため、「トランプ大統領といえども、この問題だけは容易ではない」との見方が出ている。

CNNによると、現在のトランプ政権の最大の関心事は、バイデン前大統領が行った恩赦を無効化できるかどうかだ。2024年11月の大統領選で共和党候補のトランプ大統領が勝利した後、バイデン前大統領は2025年1月の任期満了までに多くの人物を恩赦した。なかでも、違法な銃の所持で有罪判決を受けた次男ハンター・バイデン氏(55)への恩赦は象徴的な例とされている。
ハンター氏は確定判決を受けたケースだが、バイデン前大統領は裁判にかけられていない人物にまで恩赦の対象を広げた。新型コロナウイルス対策で中心的役割を果たしたアンソニー・ファウチ前国立アレルギー・感染症研究所所長、米中関係の安定化を水面下で進めたマーク・ミリー前統合参謀本部議長、トランプ大統領の議会襲撃事件(1月6日事件)への関与を指摘し弾劾を主張したリズ・チェイニー前下院議員などが含まれる。さらに、副大統領と大統領を務めた兄ジョー・バイデン氏の影響を受けて不当な利益を得たと疑われる弟ジェームズ・バイデン夫妻ら、家族5人も恩赦の対象に入った。

米メディアはこれについて「トランプ大統領による報復の対象となる恐れがある人物を救うため、バイデン前大統領が『先制的恩赦』を行使した」と報じている。先制的恩赦とは、まだ有罪判決を受けていない、または起訴されていない人物をあらかじめ免責する制度である。
トランプ大統領は大統領選勝利後、正式就任前の当選者時代から「バイデン前大統領の恩赦は無効だ」と主張してきた。恩赦は、大統領が自筆で署名して初めて法的効力を持つが、バイデン前大統領は直接署名せず「オートペン(自動署名機)」を使用したという。さらに、側近や秘書が本人の知らないうちに恩赦対象者リストを作成し、偽の署名を入れたという疑惑まで浮上している。現在、米司法省はパム・ボンディ長官の指揮のもと、オートペン署名による恩赦が法的に有効かどうかを調査している。
米国の法曹界では、「大統領本人が恩赦対象者を自ら決定し、部下に代理署名させた場合は法的に有効」とする見解が優勢だ。したがって、焦点はバイデン前大統領が恩赦対象を自ら選んだかどうかにある。
仮にトランプ政権が新たな「証拠」を見つけ、それを根拠に恩赦の無効化を進める場合、連邦裁判所に「前政権による恩赦を無効にしてほしい」とする訴訟を起こすしかない。最終的な判断権は連邦最高裁が握ることになる。
スタンフォード大学ロースクールのバーナデット・メイラー教授はCNNの取材に対し、「最高裁が判決を通じて大統領の恩赦権を制限することは難しいだろう」と分析した。もし、バイデン前大統領に対して「手続き上の要件を満たしていないため無効」との判決が出れば、それは後にトランプ大統領にも同じ形で跳ね返る「ブーメラン」になりかねないためだ。メイラー教授は「バイデン前大統領に不利な判断が出れば、将来トランプ大統領にも同様の基準が適用されることになる」と指摘している。














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