「明確に台湾より不利にならない合意」
「韓国100%開放」発言は政治的レトリックか

アメリカのドナルド・トランプ政権で通商政策を統括するハワード・ラトニック商務長官が、米韓貿易合意に関し、半導体関税や市場開放の内容について韓国政府の発表と異なる主張を展開した。
ラトニック長官は30日、X(旧ツイッター)で前日に慶尚北道慶州市で成立した米韓貿易合意を紹介し、「韓国は完全な市場開放に合意した。100%だ!」と投稿した。具体的な開放分野には触れず、「100%」という数字だけを強調した発言は、交渉成果を誇張し、自国民向けにアピールする政治的レトリックとみられる。
今年7月、米韓両国が原則合意に至った際にも、米側は「韓国がコメや自動車の分野で歴史的な開放を約束した」と主張したが、韓国政府は「コメ市場の追加開放は一切議論されていない」と反論していた。
ラトニック長官はさらに、韓国産の自動車などに対し関税率15%を適用するとし、「半導体関税は今回の合意には含まれない」と述べた。
この発言は、「台湾より不利にならない水準の半導体関税が適用されることになった」と説明したキム・ヨンボム大統領室政策室長の前日の発表と食い違っている。
また、一部の専門家からは「米台間の通商協定がまだ締結されていないため、韓国が得た『台湾より不利ではない関税率』という約束も曖昧だ」との指摘が出ている。
アメリカは現在、台湾に対し暫定関税率20%を適用しており、米台交渉が妥結すれば、韓国との間でも詳細な調整に入る可能性がある。
台湾の市場調査会社トレンドフォースは「サムスン電子やSKハイニックスの対米輸出リスクを緩和するはずだった合意をラトニック長官が覆した」と分析し、「韓国は今後、アメリカの対応に影響を受けるだろう」と予測した。
韓国大統領室はラトニック発言を即座に否定した。カン・フンシク大統領秘書室長は同日のSBS「8ニュース」で、「政治家の発言は政治的な文脈で解釈すべきだ」と述べ、「自国向けの発言にいちいち反論する必要はない」と語った。
さらに「今回の米韓合意では、農産物を含む追加的な関税撤廃や市場開放を約束した事実はない」と強調し、「両国で解釈の違いが生じているだけだ」と説明した。
キム・ナムジュン大統領室報道官もブリーフィングで、「韓国はすでに米国産品に対して十分に市場を開放しており、新たな変化はない」と述べた。
そのうえで「半導体関税については、韓国企業が台湾より不利な扱いを受けないよう調整が行われ、不確実性を解消した」と説明した。
ク・ユンチョル副総理兼企画財政部長官も国会企画財政委員会で、「市場開放に関しては全く事実と異なる」と明言した。
「ラトニック長官は『韓国市場はすでに米韓自由貿易協定(FTA)締結時点で99%程度開放されている』という趣旨で発言したと理解している」と述べたうえで、通貨スワップを伴わず、年間200億ドル(約3兆円)を上限とする現金投資で合意した点について「国益にとってはるかに有利だ」と評価した。
 
            


















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