「関税は税、税の権限は議会にあり」 判事らが相次ぎ指摘
AP通信「大半の判事が大統領の広範な関税権限に懐疑的」

米連邦最高裁は5日(現地時間)、ドナルド・トランプ大統領の関税政策に関する初の審理を開き、大統領が関税を課す権限の適法性を検討した。保守派が多数を占める最高裁内からも、トランプ氏に事実上無制限の関税権限を認めることに対する懐疑的な見方が相次ぎ、世界経済を揺さぶってきた同政策の行方に不透明感が強まっている。
この日、最高裁はワシントンの最高裁判所庁舎で、政府側代理人と、訴訟を起こした中小企業および民主党系12州を代表する弁護士がそれぞれ意見を述べる口頭弁論を行った。スコット・ベッセント財務長官やハワード・ラトニック商務長官ら政権幹部が傍聴席から審理を見守った。弁論は午前から約2時間半にわたり続いた。
争点は、トランプ氏が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、議会の承認なしに世界各国に対して関税を発動できると解釈することが合憲かどうかという点であった。最高裁は現在、保守系6対リベラル系3の構成だが、この日は保守派判事からも政権への厳しい質問が相次いでいる。
トランプ氏が指名した保守派のニール・ゴーサッチ判事は、憲法が課税権限を議会に付与している点を指摘し、「それは必ず、われわれが選んだ代表者を通じて行われるべき事柄だ」と述べた。同じくトランプ氏が任命したエイミー・コニー・バレット判事も政府側に対し、「法令上または歴史上、『輸入規制』を根拠に関税権限を認めた例があるのか」と問い質した。バレット判事は後半の質疑で、「関税返還をめぐる問題は、極めて大きな混乱を招く可能性がある」とも指摘した。
ジョン・ロバーツ長官も、トランプ氏に「いかなる品目でも、いかなる国でも、いかなる期間でも」関税を課すことを認める現行の解釈について、「非常に大きな権限であるにもかかわらず、その根拠とされる法律は整合的とは言えない」と述べた。
一方、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事は、「税の賦課は議会の権限であり、大統領の権限ではない」と強調。「関税は税ではないと言うかもしれないが、関税は税そのものだ」と述べた上で、「憲法は、国民が負担するコストが議会の立法過程を通じて決定されるよう構成されている。上下両院と大統領が同意しない限り、国民に税を課す理由はない」と指摘した。
AP通信は、「多くの判事が大統領に広範な関税権限を認めることに懐疑的な反応を示した」と伝え、「トランプ氏にとって最大級の法的試練の中で、核心的な政策が揺らいでいる」と報じた。
また、トランプ氏が関税や移民政策などで「非常事態」を頻発してきた点も争点となった。エレナ・ケイガン判事は、「その理屈では、我々は常に『非常事態』にあることになる」と批判した。
下級審では1審・2審ともに、トランプ氏の措置は大統領権限を逸脱していると判断された。最高裁は早ければ年末にも結論を示す見通しである。政権側は敗訴した場合、通商拡大法232条などの「代替策」を用いて関税措置を維持する方針だが、IEEPAほどの包括的権限はなく、関税政策の大幅な見直しは避けられないとの見方が強い。さらに、これまで徴収した関税の返還に発展する可能性も指摘される。前日、トランプ氏が「これは我が国の生死に関わる問題だ」と最高裁に向けて発言したのも、政策の行方に対する切迫感の表れとみられる。
















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