ロシアはウクライナの暖房を断ち民心を揺さぶり
ウクライナはロシアの石油・ガス輸出を妨害

クリミア半島フヴァルディイスケのロシア側石油貯蔵施設が、ウクライナのドローン攻撃を受けて炎上した。ウクライナ特殊作戦軍は、攻撃が10月17日に実施されたと発表した。
ロシアとウクライナは冬の到来を前に、相手側のエネルギー基盤を狙った集中攻撃を繰り広げている。両国とも「エネルギー」が戦争継続の基盤だと位置付け、重要施設の破壊に力を注いでいる。
ウクライナは先月1日、黒海沿岸のロシア・クラスノダール地方トゥアプセ港の無人機(ドローン)攻撃を実施した。この攻撃でロシア国営大手ロスネフチの精製・貯蔵施設が深刻な被害を受けた。ウクライナ側メディアは、延べ5回の攻撃でタンカー1隻が炎上し、埠頭4か所が破壊され、ロシアの石油製品輸出に打撃が及ぶ可能性があると伝えている。ウクライナは先月、モスクワ北東部のマリ・エル共和国やウリヤノフスクの大規模精製所、南部スタヴロポリの石油化学コンプレックス、そしてクリミア半島の貯蔵施設も攻撃しており、ロシアの戦争資金源である石油・天然ガスの輸出に支障を与えることを狙っている。
これに対しロシアも先月30〜31日にかけ、ミサイルとドローン約600機を投入してウクライナ全土を攻撃し、首都キーウや西部リヴィウなど主要地域の発電所や変電所を標的とした。前線に近い北部チェルニーヒウ州の変電所やハルキウ州の送配電網も被害を受け、電力供給に支障が生じた結果、少なくとも14地域で停電が発生した。
国際原子力機関(IAEA)は、送電網の損傷がウクライナ国内の原子力発電所の安全にも影響を与えかねないと警告している。原発の冷却に必要な外部電源が途絶える恐れがあるためである。
ロシアは2022年の侵攻以降、冬が近づくたびにウクライナのエネルギー施設を集中的に攻撃してきた。寒い夜に暖房や照明を奪うことで国民の士気をくじき、戦意を弱めるのが狙いとみられる。ウクライナは送電設備の迅速な復旧や防空網の強化で対処してきたが、ロシア側の兵器生産能力の増大により対応は限界に近づいている。
こうしたなか、ウクライナ側も昨年末からロシア本土に対する攻撃を本格化させ、相手のエネルギーインフラを破壊する作戦に軸足を移している。双方が「目には目を」で応酬する構図が続いている。
ロイターやエコノミストなどは、ロシアはウクライナ都市の電力・熱供給を絶つことで民心を揺さぶろうとしており、ウクライナはロシアの石油・ガス輸出に打撃を与えて内需や財政面で圧力をかけようとしていると分析する。両者ともエネルギーを「攻撃の核心的手段」と位置付け、相手の戦争継続能力を削ぐことを目指している。


















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