
ロシアで、ウクライナ戦争に従軍する未婚男性と「偽装結婚」を結び、戦死時に支給される遺族補償金などを狙う新手の「結婚詐欺」が相次いでいることが明らかになった。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』が5日に報じたところによると、ロシアの裁判所は軍人を欺いて結婚し、死亡補償金を受け取った事例を複数確認しており、詐取額は合計18万ドル(約2,800万円)を超えるという。
WSJは、軍人本人や親族が「塹壕で稼いだ金を偽装結婚で奪われた」と訴えた、あるいは判決が確定したロシアの裁判記録6件を確認したと伝えた。
具体的な例として、2023年10月、セルゲイ・カンドズコ氏は入隊の翌日に結婚式を挙げた。しかし40代だった彼は、家族や友人に新婦エレナ・ソコロワ氏との結婚について一切説明していなかったという。式は指輪交換も写真撮影もなく、わずか20分で終わった。参列者は1人だけだった。
判決文によれば、ソコロワ氏は結婚後も前夫とその子どもたちと同居を続けていた。その後、カンドズコ氏が前線で負傷し死亡すると、彼女は遺族に支給される約20万ドル(約3,000万円)を受け取った。これはロシアの平均賃金の約20年分に相当する額だとWSJは指摘している。
今年初め、ロシア民事裁判所は、ソコロワ氏が遺産を得る目的でカンドズコ氏を欺いて結婚したと認定し、婚姻を無効とした。彼女には3,000ルーブル(約5,700円)の罰金が科された。
前線兵士を標的にした詐欺行為は広がりを見せている。WSJによれば、こうした女性たちは「ブラック・ウィドー(黒い未亡人)」と呼ばれているという。
こうした偽装結婚が横行する背景には、ロシア政府が兵士を募るために高額の報酬を提示していることがある。ロシアは入隊時に高給やボーナスを支給し、最前線で戦死した兵士の遺族には多額の補償金を支払っている。戦死した兵士の家族に支給される補償金は階級や状況により異なるが、1,450万ルーブル(約2,700万円)を超える場合もあるとされる。


















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