共同債発行や直接補助金も浮上 利子負担と財政圧迫が懸念
資金は来年3〜4月に必要 EU、暫定的な調達策を協議する可能性

ウクライナ戦争の資金支援に向け、凍結されたロシア資産を活用しようとしてきた欧州連合(EU)の計画が難航している。当初の構想が壁に突き当たるなか、さまざまな代替案が提示されているものの、実効性のある手立ては見いだせていないとの見方が出ている。
EU欧州委員会は、ウクライナ侵攻後に凍結されたロシア資産の一部を活用し、今後2年間でウクライナに1,400億ユーロ(約25兆円)を無利子で貸し付ける「賠償金ローン」案を推進してきた。
しかし、ベルギーが反対姿勢を崩しておらず、計画は一向に前進していない。
EU域内で凍結されているロシア資産の大半は、ベルギーが拠点の証券集中保管機関(CSD)「ユーロクリア」に預けられている。ベルギー政府は、将来的に法的責任を負う可能性やロシアの報復リスクを理由に、計画に強い慎重姿勢を示している。
こうした状況を受け、欧州委員会は代替策の検討にも着手した。
17日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』によると、委員会はこの日、加盟国に書簡を送り、ロシア凍結資産を使わずにウクライナ支援を行う場合の複数の選択肢を提示したという。
その中には、EUが共同で資金を借り入れて支援する案や、各加盟国がウクライナに直接補助金を拠出する案が含まれているとされる。
ただし、これらの案も支持を得るのは容易ではないとの声がある。共同債発行は利子負担などコストがかさみ、直接補助金はすでに財政赤字に苦しむ加盟国に重い負担となるためだ。
ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は先週、ほかにも選択肢はあるものの、ロシア凍結資産を活用した貸し付けこそが「ウクライナの防衛と経済を維持する最も効果的な方法だ」と強調した。
一部からは、EU非加盟国であるノルウェーが国富ファンドを活用し、EUの融資に対する保証国となる案も浮上した。
これは、ウクライナ戦争に伴うガス価格高騰でノルウェーが1,000億ユーロ(約18兆円)超の巨額の超過利益を得たことを踏まえたアイデアだった。
しかし、イェンス・ストルテンベルグ財務相は12日、ノルウェーが単独で保証人となることはできないと明言した。
EU当局者らは、来年3〜4月にはウクライナ向け資金支援を実行する必要があると見ている。このため、手続きが遅れた場合は、資金空白を避けるための暫定的な調達策を検討する余地もあるとの指摘が出ている。
『NYT』は、ロシア凍結資産を活用した貸し付け計画が頓挫した場合、深刻な問題が生じかねず、現在議論されている代替案も容易に実行に移せるものではないと報じた。














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