
米国議会予算局(CBO)は最近、米国のドナルド・トランプ大統領が強硬関税戦略を相次いで後退させたことで、今後10年間に期待されていた財政赤字縮小効果のうち約8,000億ドル(約125兆8,967億円)が消えたと推定した。国家負債が38兆ドル(約5,972兆6,707億円)を超えた状況で、関税政策が依然として米国の財政政策の核心的な論争として残っている中での評価だ。
CBOが公開した最新の予算見通しによると、関税政策が米国の財政赤字に与える効果は8月の見通しに比べて大幅に減少したという。当時は実効関税率20.5%を前提に2035年まで3兆3,000億ドル(約518兆6,420億円)の財政赤字縮小と約7,000億ドル(約110兆150億円)の利子費用削減が可能だと見込まれていた。
しかし6月以降、関税の範囲と強度が大きく変わった。行政府が中国・欧州連合(EU)など主要貿易相手国との緊張と報復措置に対応するために、様々な輸入品の関税を引き下げたり緩和したりする中で、財政見通しも覆された。
現在、CBOは実効関税率16.5%を基準に財政赤字縮小効果を2兆5,000億ドル(約392兆9,106億円)、利子費用削減を5,000億ドル(約78兆5,821億円)程度に下方修正した。関税で期待されていた財政改善効果がかなりの部分で侵食された形だ。CBOはこのように大幅な負債縮小見通しが関税政策の行方に非常に敏感だと指摘した。
トランプ大統領は最初に関税を押し進める際から連邦負債を減らす手段だと強調しており、8月までには「政府の見通しをはるかに上回る歳入が入ってくる」と主張していた。CBOは9月初めから11月初めにかけて、日本・EU・インド・中国、そして自動車・部品を巡る5回の関税引き下げ・調整を反映して見通しを見直した。ここにはまだ米国の家計の財布と直結する追加の引き下げ措置は含まれていない。
共和党が11月初めに米国各地の再任選挙で敗北し、民主党が出馬した18の選挙すべてを席巻したため、トランプ大統領は中旬に「Affordability(経済的に無理なく利用できる状態)」論争が起きた品目から関税を一部撤回した。彼はエアフォースワンで記者たちに「コーヒーのような食料品に若干のロールバック(関税引き下げ)を実施した」と語り、数時間前には茶、果物ジュース、ココア、香辛料、バナナ、オレンジ、トマト、一部の肥料に課されていた関税を撤廃する行政命令に署名した。
そうだとしてもトランプ大統領が民主党の生活費問題提起をそのまま認めたわけではない。彼は翌日ソーシャル・メディアに「民主党が使う『Affordability』という言葉は嘘だ。完全な『詐欺(con job)』だ」とし、「今年の感謝祭の費用は『詐欺師のジョー(Crooked Joe)』の下だった昨年より25%低い。真のAffordabilityの政党は我々だ」と主張した。これは品目数を半分に減らして価格を下げたウォルマートの食事パッケージを指しての発言と解釈された。
関税で期待されていた財政赤字縮小効果が減少する中、米国の財政状況はさらに悪化している。財務省によると米国の国家負債はすでに38兆ドルを超えており、数年間続いた「財政緊縮」公約にもかかわらず増加傾向を止める兆しが見えないという。CBOは当初最も攻撃的な関税シナリオでさえこの急激な負債増加の流れを根本的に変えるには到底不足しているとし、今やそれすらも薄れてきていると指摘している。
経済学者たちは関税が短期的に政府財政を助けるのは確かだが、消費者物価の上昇、供給網の混乱、成長の鈍化といった副作用が長期的に財政健全性を損なう可能性があると警告している。一部の独立した分析者はCBOの見通しが関税戦争が引き起こす長期的な成長鈍化リスクを十分に反映していないと指摘している。














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