
主要20か国・地域(G20)首脳会議の場で日中の首脳級接触が実現しなかったことを受け、主要メディアでは、両国の対立が長期化する可能性が高いとの見方が強まっている。政府内でも、関係悪化の長期化を前提にした準備が進められているという。
『読売新聞』(24日付)によると、政府は22~23日に南アフリカで行われたG20首脳会議に際し、高市早苗首相と李強中国国務院総理との接触を突破口に対話を継続し、対立の深刻化を食い止める構えだった。しかし、中国側が強硬な姿勢を崩さず、協議は不発に終わったと伝えている。
政府は当初、外務省の中国担当課長を首相の会議日程に同行させる予定だった。李総理は中国共産党序列2位で、習近平国家主席に近い人物とされるため、直接の意思疎通を通じて首相の意向を中国指導部の中枢に伝えられるとの期待があった。
しかし、中国側は「会談の予定はない」との立場を繰り返し表明した。これを受け、政府内では「現時点での接触は困難」との見方が広がり、課長の派遣は見送られたという。さらに政府内では、「日本側が会談を切望しているように見られる構図が、中国側の宣伝に利用されかねない」との警戒感もあったと、同紙は指摘している。
首脳級会談の実現が見送られたことで、国内では外交的な行き詰まり感も広がりつつある。高市首相は、中国が反発している「台湾有事の際には関与する可能性がある」との過去の発言を撤回しない姿勢を崩しておらず、中国側も「主権侵害だ」として強く反発している。このため、両国の溝は当面埋まりにくい情勢である。
政府内では、中国への経済的依存を「リスク」とみなす声も強まっている。対立の長期化を見越し、供給網の再構築などを進め、中国依存の低減に向けた対応を加速させる方針であるという。外務省幹部の一人は「最悪の場合、対立が数年単位で続く可能性もある」と述べ、長期戦への備えを示した。
中国側は高市首相の発言に反発し、自国民に対して日本への旅行や留学の自粛を促しているほか、日本産水産物の事実上の輸入禁止措置も継続している。政府が最も警戒しているのは、レアアースなど重要鉱物の輸出規制強化である。
高市首相はこうした動きを念頭に、23日のG20首脳会議討議の場で「重要鉱物の輸出管理を巡り、国際社会の懸念が高まっている」と指摘したうえで、「重要鉱物の安定供給は世界経済の発展に不可欠であり、供給網の過度な集中を避けるために各国が協力すべきだ」と強調した。
一方、読売新聞は、中国が現時点ではレアアース輸出規制などの強硬な経済措置に踏み切っていない背景について、「日中対立の影響が国際社会全体に波及することを避ける狙いがある」と分析している。政府関係者も「中国は、国際的なサプライチェーン混乱を招く措置は慎重に避けている」と指摘している。中国産レアアースを利用して日本で製造された製品を輸入する第三国への影響も考慮しているとみられる。














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