2025年産、9年ぶりの最大生産見通し
需給の歪みで民間在庫が増加へ
農林水産大臣、政府介入の最小化を表明

小売米価が高騰し、5キログラム当たり4,000円台を超える水準で推移している。一方、市場では来年を境に急落する可能性があるとの警戒感が広がっている。
農林水産省は、2025年産の米の生産量が前年比69万トン増の748万トンになるとの見通しを示した。これは9年ぶりの高水準だ。これに対し、2026年6月までの国内需要は最大でも711万トンにとどまると見込まれており、約37万トンの供給超過が生じる計算になる。豊作による供給圧力に加え、民間在庫も急増しており、米価下落への懸念が現実味を帯びつつある。
こうした兆候は、現場調査にも表れている。米卸業者などで構成する公益社団法人「米穀安定供給確保支援機構」が10月に実施した調査では、今後3か月(11月~来年1月)の米価見通し指数が39となり、直前の3か月(10月~12月)の57から大きく下落した。この指数は50が横ばいを示し、数値が低いほど価格下落の見通しが強いとされる。指数が50を下回ったのは3か月ぶりで、30台まで低下したのは6月以来4か月ぶりとなる。
ただし、小売の現場では、依然として高値が続いている。農林水産省によると、今月9日から16日にかけて全国のスーパー約1,000店舗で販売された米の5キログラム当たり平均価格は4,260円となり、前週から56円下落した。3週ぶりに値下がりに転じたものの、9月以降に新米の流通が増えているにもかかわらず、高水準での推移が続いている。このため、小売米価は11週連続で4,000円台を維持している。
一方、流通関係者からは「新米が高すぎて売れない」とする声が相次いでいる。集荷業者の中には、契約を取り消した事例も出ているという。小泉進次郎前農林水産相が主導した大規模な備蓄米放出の影響で、2024年産ブランド米が依然として市場に残っており、新米の販売不振に拍車をかけているとの指摘もある。
専門家は、今後の米価下落リスクとして在庫の増加を最大の要因に挙げる。農林水産省が公表した2025~2026年の主食用米の需給見通しでは、2026年6月末時点の民間在庫が最大229万トンに達するとされている。これは2003年以降で最多となり、政府が適正水準とする180万~200万トンを大きく上回る。
さらに、輸入米の急増も市場の不安定化に拍車をかけている。財務省が10月30日に発表した貿易統計によると、2025年度上半期(4~9月)の米の輸入量は8万6,523トンとなり、前年同期(415トン)の約208倍に拡大した。このうち米国産が7万714トンを占め、前年の約1,000倍超に急増している。米国産米は5キログラム当たり3,000円台で販売され、国産米からの置き換えが進んでいる。
こうした状況について、鈴木憲和農林水産大臣は「米価は市場で自律的に形成されるべきだ」と述べ、政府による直接介入に慎重な姿勢を見せている。4日の記者会見では、「過剰在庫の下で新たに備蓄米を買い入れることは考えていない」と明言した。
これに対し、全国農業協同組合中央会(JA全中)の藤間則和常務は6日の定例記者会見で、「大臣の発言は将来方針を示したもので、現在の供給過剰は例外的な状況だ」とした上で、「政府は備蓄米の買い入れに踏み切るべきだ」と主張している。

















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