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「母を連れ出すだけ」で“銃殺リスク”北へ逆戻り…北朝鮮の狂気が生んだ息子の決断

中村紀彦 アクセス  

「母を連れ出す」ただそれだけのために北朝鮮へ戻った男

引用:YouTube@channelA-ade
引用:YouTube@channelA-ade

平凡な暮らしを捨て、北朝鮮を二度越えた脱北者キム・ガンウ氏。その劇的な経緯が最近明らかになり、多くの人々の胸を痛ませている。

キム氏が北朝鮮を脱出したのは2016年5月のことだ。2009年に父親の理不尽な死を目の当たりにしたことが、脱北を決意したきっかけだった。韓国での生活は順調だったが、北に残してきた母親への思いが日に日に募っていく。そして約3年後、ついに母親を連れ出すため、再び北朝鮮へ戻る決断を下した。

入北は危険の連続だった。鴨緑江を渡り北朝鮮側へ潜入したキム氏は、警備兵の交代時間を狙って鉄条網を越えようとした。しかし、そこで予想外の警備兵と鉢合わせしてしまう。

AKライフルを突きつけられ、荷物検査が始まった。鞄の中には韓国のパスポートが入っている。見つかれば即座に拘束される。絶体絶命の状況で、キム氏は警備兵に襲いかかった。素手で石を掴み、警備兵の口を塞ぎながら何度も殴りつける。なんとか相手を無力化すると、そのまま鉄条網を突破し、実家を目指して走った。

命からがら実家に辿り着いたとき、喜びと安堵感で足の力が抜けそうになったという。翌日、母親に脱北の経緯を語って聞かせた。最初は信じられない様子だった母親も、iPhoneに保存された韓国での写真や動画を見て、ようやく息子の話が真実だと理解した。こうして、母親との二度目の脱北計画が動き始めた。

引用:YouTube@channelA-ade
引用:YouTube@channelA-ade

ところが状況は思わぬ方向へ転がっていく。キム氏と警備兵の衝突事件が国境全域に伝わり、特別警戒令が発令されてしまったのだ。

キム氏は山中に身を隠し、中国の通信網を拾ってブローカーと断続的に連絡を取った。脱北のタイミングを慎重に探る日々が続く。約2週間後、ブローカーが国境警備隊の買収に成功し、母親と共に中国へ渡る計画が整った。

だが当日、配置されていたのは買収していない別の班だった。計画は失敗。母親を自宅に帰し、キム氏自身は親戚の家へ逃げ込んだ。さらに追い打ちをかけるように、保衛部の職員が母親の家に踏み込んできた。一歩間違えれば、家族全員が危険にさらされる。キム氏は身動きが取れなくなった。

熟慮の末、キム氏はある結論に達した。母親を韓国へ連れてくる最も確実な方法は、自分が先に脱北し、外から母親の脱出を手配することだ。

再び選んだのは、鴨緑江を渡るルートだった。地形を熟知している上、中国側へ最短距離で抜けられる。死力を尽くして川を渡り、入北から22日目、キム氏は二度目の脱北に成功した。中国を経由して、再び韓国の地を踏んだ。

引用:YouTube@channelA-ade

引用:YouTube@channelA-ade

韓国に戻った翌日、キム氏は国家保安法違反の疑いで逮捕された。こうなることは覚悟していた。素直に取り調べに応じ、約5か月間の厳しい調査を受けながらも、母親の脱北支援に全力を注いだ。

母親はブローカーの手引きでタイを経由し、無事に脱北。韓国で、ついに親子は再会を果たした。

その後の裁判で、キム氏には懲役6か月・執行猶予2年が言い渡された。適用されたのは国家保安法の「潜入・脱出」違反ではなく、南北交流協力に関する法律違反だった。裁判所は、同種前科がないこと、反省していること、そして母親を救うための行動だったことなどを情状酌量として考慮したという。

中村紀彦
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