スイスが30日(現地時間)、女性徴兵制度の導入をめぐる国民投票を実施する。賛否双方が激しく対立し、社会的論争が高まる一方で、財政負担への懸念など現実面での課題から、法案が実際に成立する可能性は低いとみられている。

AFP通信によると、27日(現地時間)時点で、全ての国民に兵役や公的奉仕を義務付ける「国民義務市民奉仕制度」への転換の是非を問う国民投票を前に、スイスで賛成派と反対派の議論が鋭く対立しているという。
議論の焦点は、性別を問わず全スイス国民が社会・環境のための公的な奉仕を義務として担うかどうかだ。現在の制度は男性のみに兵役義務があり、軍・民防隊・民間代替役務など対象分野も限定されている。これを、環境保護や災害予防、弱者支援、食料安全保障など社会全体へと大幅に拡大する内容が含まれている。
AFP通信は、賛否双方がいずれも「男女平等」や「女性の権利」を主な根拠に掲げている点が興味深いと指摘している。提案を主導する団体「市民奉仕協会」は、国家への義務を性別で分ける現行制度こそ、社会統合を阻害する要因だと主張している。ノエミ・ローテン代表は、男性のみが兵役で形成する人的ネットワークや経験から女性が排除されている現状自体が差別だと訴えている。
一方、反対派は義務市民奉仕制度によって平等が強化されることはないと反論する。スイス労働組合連合(USS)は、女性はすでに60%の時間を無給労働に費やしているのに対し、男性は正反対だとし「これ以上女性に無償奉仕を求めれば不均衡が悪化するだけだ」と指摘した。スイス政府も、対象を女性にまで広げれば人的需要を大幅に上回り、運用コストが倍増して経済的負担が生じるとして反対の立場を示している。
国民投票で可決される可能性については、厳しいとの見方が出ている。初期には一定の支持を集めたものの、世論調査機関GFSベルンによる最新の調査では、反対が64%に達しているという。
なお、30日に実施される国民投票では、市民奉仕制度とあわせて高額相続者への相続税引き上げ案も採決される。相続財産が5,000万スイスフラン(約97億566万258円)を超える場合、超過分の半額を課税する内容だが、こちらも反対が68%に上り、成立は難しいと見込まれている。













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