
英国政府は、議論を呼んでいる中国のロンドン超大型新築大使館の建設計画について、承認判断を再び先送りした。当初は今月10日までに結論を出す予定だったが、情報機関による安全保障面の審査が長引いたことが影響したとみられる。
2日(現地時間)の英紙タイムズとスカイニュースによると、治安・情報機関のMI5(保安局)とMI6(対外情報部)を所管する内務省と外務省は、最近になって新大使館計画に関する安全性評価を提出し、いずれの機関も新築に異議は唱えなかったという。
ただ、最終決定権を持つスティーブ・リード住宅・コミュニティ・地方自治相が、他省庁との調整に必要な時間を確保できなかったため、承認発表は来年1月20日以降にずれ込むことになった。
中国は2018年、ロンドン中心部の旧王立造幣局(ミント)跡地およそ2万平方メートルを取得し、欧州最大規模の中国大使館を建設する計画を進めてきた。しかし英国政府は、同地区の金融機関の通信網にも近いことから、経済安全保障の観点で慎重な検証が必要だとして承認を保留している。周辺住民からも、監視強化によるプライバシー侵害への懸念が相次ぎ、反対の声が上がってきた。
背景には、中国の諜報活動に対する警戒感の高まりもある。英国では最近、中国のためにスパイ行為を行った疑いで男性2人が摘発され、MI5は中国発のサイバー諜報や機密技術の窃取リスクについて、繰り返し警告してきた。新大使館の予定地周辺では「欧州における中国のスパイ拠点になる」と批判する住民デモも続いている。
今回の再延期に対し、中国政府は強く反発している。在英国中国大使館はホームページ上の声明で「英国側が承認を繰り返し先送りしていることに強い不満と断固たる反対を表明する」とした上で、「双方の信頼関係がこれ以上損なわれないよう、英国政府は速やかに申請を承認すべきだ」と主張した。
香港の民主化運動後に英国へ亡命した反中活動家らは、設計図上の「非公開スペース」が拘束施設などに転用される恐れがあるとして、以前から懸念を示している。
英国政府の最終判断は、キア・スターマー首相の来年1月末の中国訪問と時期が重なる可能性がある。英メディアによれば、スターマー首相は2018年のテリーザ・メイ元首相以来、約8年ぶりとなる首相の訪中を模索している。
タイムズ紙は「英政府が対中経済関係の立て直しを模索するなかで、承認のタイミングそのものが極めてデリケートな問題になっている」と分析している。














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